初めてのキノコ
古末行一


a  きのこの図鑑を見ていると今までに出会ったことのないきのこというのがたくさんあるものである。何度も見ているうちに、そういうきのこをぜひ自分の目で確かめたいという気持ちが、だんだん強くなってくる。そんなきのこの一つにタマゴタケがあった。きのこに興味を持ち図鑑をたよりに色々なきのこを物色している時に、この色も鮮やかなタマゴタケに出会った。その時は何人かでハイキングの途中であり、昼食には皆でナベを囲む予定であった。早速、料理にこのタマゴタケを入れることにしたが、なにしろ初めてのきのこである。図鑑には「食用」と書いてあり、おまけに「美味」とも書いてあるのだが、何といっても、あの毒々しい色から他の仲間も疑いの目で見てしまっていた。ともかくこのきのこは、絶対に間違えることはないという確信をもって思い切ってナベに入れた。すると、あの鮮やかな赤色はたちまち色あせてしまった。皆も少し安心して、結局「おいしい」と言いながら全部平らげてしまった。それ以来毎年のようにタマゴタケを見付けようと必死になって捜すが、時々しか廻り会えないのが残念である。その他に特に印象に残っているきのこは、ヌメリスギタケ、アミガサタケ、ヤマブシタケであるが、初めてのきのこに出会うのは非常に楽しいものである。



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