きのこ撮り
横山 元(浦和市)


a  いつ、どこに、どんなきのこが生えているのか見当をつけ、写真を撮りに行くのだが、なかなか的中しない。そのかわり思いがけないきのこに遭遇し、いい写真が撮れたときほどうれしいことはない。フイルム一本写して一枚ぐらいの割合で、いい写真を写せるよう努力している。腕の方は、いつになっても上達しないので、数で勝負しているというところだろうか。ひとつのきのこを、一方向から数枚、これはと思うものは10枚ぐらい写すことにより、偶然に一枚ぐらい、いい写真が撮れているのではないかと思いつつ、シャッターを切っている。

 カメラはおもに一眼レフ・35oを使っている。これは、レンズの交換ができ、操作が自動化されているので、比較的簡単に写せる。
 レンズは、広角・24oから、マイクロレンズを含め、望遠・200mmまで、きのこの種や生態環境に応じ使い分けている。
 きのこの生えている場所は、薄暗いところが多いから、当然スローシャッターになるので、三脚なしでは無理である。とくに、精密な接写となると、できるだけ絞り込むため、ブレとピント合せには、十分注意が必要だ。落葉が積っていたり苔むしているところでの撮影や、三脚をのばしきったとき、とくに、気配りをしている。

 風の強いとき小さなきのこは、ファインダーをのぞくと、けっこうゆれている。風の周期を見はからって、ゆれが弱くなったときに、シャッターを切っている。
 目ではきのこ全体がはっきり見えても、写真にしてみると暗くて、どんなヒダ、茎なのか、よくわからないことがある。人の目は、都合のいいところだけ見えるようにできており、暗くても自動的に調節する。ところが、カメラはそれなりに写すので、カメラだけに任せておくと、いい写真は撮れない。そこで、銀レフを使い、暗い部分に反射光を当てると、同じきのことは思えないほど、きれいに写る。銀レフは、家庭用のアルミホイルにシワをつけて使っているが、明るすぎるときは、身近にある白紙や新聞紙でもよい。

 平地での小さなきのこの撮影では、地面に穴を掘り、一脚を突き刺し、腹ばいなって、ファインダーをのぞいている。
 ストロボは使っていない。8秒まで適正露出となるので、よほど暗いところででもない限り、うまく撮ってくれる。8秒で対応できないときは、B(バルブ)に切換え、秒針を見ながら、シャッター操作をしている。暗いところでの数秒の誤差なら、ほとんど影響はない。
 きのこの生えているところの一部に、陽がさしているようなときは、出来上った写真がまだら模様になり、みにくくなる。洋傘や人影で光をさえぎり、明るさを均等にして、撮るとよい。

 フイルムは、フジクローム50D,RFPを使っている。ASA50のフイルムではあるが、カメラのASA感度は、ASA64に補整して常時使用している。これは、きのこの色を正しく再現出来る、私なりの方法であり、かなりの効果がある。
 フイルムは、カメラにより相性があると言われている。写す人の好みでもあるが、カメラに合ったフイルムできれいに写し、チャンスを生かしたいものである。
 ネガフィルムより、リバーサルフイルムがなにかと都合がよい。陽画のため現像されたフイルムを見ただけで、良し悪しが分かるし、スライドで拡大しても楽しめる。また、プリントも、ポジフィルムと同じ色に指定できるし、写りのいいものだけを写真にすればいいので、節約にもなる。
 ポジフィルムで明るく写っていても、写真にすると一段暗くなるので、できるだけ明るめに写しておくことがポイント。
 また、画面いっぱいに写すと、自動プリントのさい、きのこの一部をカットされてしまうので、その分だけやや小さめに写しておくといい。また、全体に、横長だけでなく、縦長も写しておきたい。

 フィルムをケチったため、貴重なきのこを取逃したことがある。フイルムは多めに、予備の乾電池も、常に用意して、出かけるようにしている。旅費、時間、きのことの遭遇の確率を計算すれば、フイルム代など微々たるものである。
 撮り終えたら、採集と後がたづけを! きのこも他の山菜同様、自分に必要の分だけにし、出来るだけ沢山残しておきたい。沢山生えているからといって、知人に配り歩くほどには、採るべきではない。
 撮影データは、すぐに記録しておくこと。「そのうちに暇をみて…」と思っているうちに、忘れてしまうものである。
 きのこの名前は、すぐには、分からないものがある。ポジフィルムを見ながら、図鑑で調べるのも楽しみの一つだ。また、月に一度、採算会や研究会があるので、その機会に教えていただける。

 以上、きのこの写真について反省をこめ記してみたが、きのこの写真は、誰にでも簡単に撮れ、失敗すればするほど、次にはいい写真が写せるようになる。私違アマチュアが撮った一枚の写真が、日本中のきのこファンを、楽しませることになるかもしれない。皆で一枚でも多く、いい写真を撮り、埼玉きのこ同好会を、今年も、一歩前進させようではありませんか。

(87.1.5)



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