裏磐梯のきのこ採り
高和寿子(上福岡市)


a  ある年の九月、友達に誘われて、裏磐梯の沼尻にいきました。友達がいうには、「このあたりはきのこも沢山出るが、『迷い沢』、『仏沢』という名前もあるんだから、きのこに夢中になっている間に、仏さまになった人が何人もいるらしいよ」とのこと。しかし天気も良好、『先ずは籠など下げて!」と、近くの山に出かけました。赤松、ウラジロモミなどの同に、楢、ケヤキ、ブナなどの明るい林に入りました。はじめは小型のきのこがぼちぼちでしたが、下草の少ない主に松の林の中に大型のイグチ、初めてみる大きなもの、アカコウジでした。「こんなに大きくなるとは!」と、びっくりしました。それにしても分らないきのこばかり。やはり指導者がいなくては、本をひっくり返したぐらいでは、とても分りせん。たまたま向うから一人のきのこ採りらしい人がきましたので、いろいろ聞きましたが、「そんなものは、この辺では食わねー!」と言って、自分の採ったきのこを見せてくれましたが、二三種類だけで、みな軟弱そうな小型のものばかりでした。次の日は、方面を変えて、別の道を通って探しましたが、さっばりで、まるで出ていません。帰りかけましたら、「きのこを採ったんですけど、食べられるでしょうか?」と、女の人に 声をかけられ、見るとカキシメジの立派な、いかにもおいしそうにみえるのを、籠一杯採っていました。「残念ですげど、これはカキシメジといって、東北地方のきのこ中毒の過半数を占めると、本に記いてありましたよ」と言うと、「シメジという名がついていても、食べられないのがあるんですか!」と、がっかりしていました。帰途の土手には、カキ シメジが沢山出ていました。

 途中、根まがり竹の丈なす中に、ガサガサと入りましたら、朽木にスギヒラタケが真白にずらりとならんで、まことに美事でした。この辺はどういうわけか、山の中よりも、帰りかけの土手に、ナラタケ、クリタケ、キナメツムタケなどが出ていました。「迷い沢」「仏沢」などは、松茸などの出るような、もっと深い山だったのでしょう。




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