キヌガサタケ、秩父で観察
吉田考造(皆野町)


a 県立自然史博物館には、キヌガサタケの標本が6点あるが、それらのいずれもが秩父産(横瀬町、秩父市、長瀞町、両神村)で、採集時期は7月中旬から9月下旬までとなっている。私自身が採集をしたものもあるが、その成長過程を観察することやその生態を写真で記録することは、今までに一度もなかった。連絡を受け、現地に駆けつけるころは陽は高く昇って、すでにキノコバエに食い荒らされ始めていることが多かったためである。
今年(1997年)の7月18日、かねてよりお願いしていた東京新聞秩父支局の村田英雄記者から秩父郡横瀬町宇根の竹林でたくさんの発生があるとの連絡を受けた。午前10時頃であったので午後一番で現地を訪れたが、事実たくさんの発生があったが、写真記録に値するものは1本も無かったのである。しかしながら、そのモウソウチク林内を地主の案内で調査した結果、明日には、キヌガサタケになるだろうというタマゴ状の幼菌をいくつか見つけたので、明朝に期待をしたのである。
翌年7月19日午前6時、前夜約束をしていた会員の坂本晴雄さんと現地を再度訪れた。すでに柄を伸ばしているものもあれば、まだタマゴ状のものもあった。わたしもカメラをかまえて撮影にはいったが、何コマか撮った後、カメラが電池切れしまったのである。坂本さんに来てもらって本当に良かったと思った。その写真を紹介し、記録とする。柄が伸び、縮んでいたマントの編み目が一つづつ下方に広げていく時、風もないのに時折マントが揺れるのである。プチッ!今にも聞こえそうなはじけた音をたてながら・・・。臭くはない、何度も我が耳をマントに近づけてみたのである。
このほかに今年のキヌガサタケは7月13日に上記の坂本さんが群馬県高崎市城山町で採集したものが新たに標本の一つに加えられた。また、その前日の12日には、同所で同じく会員の横山元さんと共に成長記録を撮影したとのことである。
なお、横山さんが上記の産地高崎市に隣接する吉井町で昨年(1996年8月4日)撮影した成長記録を千葉菌類談話会通信(No.13, Jul. 1997)に発表したので併せて紹介する。



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