きのこ2題
富田 実(幸手市)


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私を古峰原に招くきのこ

 8月31日鹿沼市内通ったら、雑貨屋に「きのこ篭あります」の貼紙があり、魚篭より一回り大きい竹篭が並んでいた。この鹿沼市内でまとまった広葉樹林があるのが古峰原で、9月中旬から10月初旬には林道のあちこちに車を止めて近くの林に入り込んでいる人をみる。作業着姿で腰に篭をくくりつけ、長柄の鎌を持ったセミプロにも出会う。私がこの古峰原を最初に訪れたのは94年9月である。それ以降既に7回も足を運んでいる。そのうち5回がきのこ目当ての山登りである。
 私が登るのは登山ガイドには健脚向けと書いてあるだけで、コ−ス案内のない三枚石新道である。初回は登りだして早々と道をはずしてしまい、キノコどころではなかった。カバイロツルタケがあちこちに生え、クチベニタケの群落、それに1本だけだったが濃い青紫色のキノコが印象に残っている。しかし、どのあたりを登っているか見当がつかないまま先を急ぎ、頂上に近くなったことが判り、写真を撮ろうという気持になったときはこれらのキノコは見当らなかった。
 95年の秋はどこの山に行っても林の中が乾燥していてキノコが不作だったが、古峰原も例外ではなかった。9月は雨の中を登ったのに、確認できたのは14種類で、まとまって生えていたのキノコはなく、辛うじてスギタケモドキとコスリコギタケ?を撮影して帰ってきた。10月は林の中の道も乾燥していて2時間歩いて、見つけたのはモエギタケの幼菌1本とサルノコシカケの仲間だけという不作だった。しかし、頂上まであと20分というところで、ブナの立枯れと思われる樹からムキタケが生えているのを見つけ、12枚収穫できたのは幸運だった。さらに時間が余ったので、隣の方塞山へ向かったら、手前にカラマツ林があり、沢も流れている。林に入ると予想通りハナイグチを採ることができた。
 96年は8、9、10月の3回登った。とくに8月は個人的にキノコ採りに出かけなかった時期だったので、今まで見なかった種類を見ることができた。アキヤマタケ、ズキンタケの仲間、ヒメベニテングタケ、灰紫色の小型のキノコなどを見つけ、食用キノコは採れなかったが満足できた。9月は撮影対象をブナ帯から上に生えるキノコにしぼり、再びカラマツ林にまで足を伸ばした。ブナ帯でヌメリササタケ?、カラマツ林でハナイグチ、キオウギタケ、ホテイシメジを採って帰ってきた。キノボリイグチとキンチャヤマイグチらしきキノコを見逃したのが残念だった。10月は、「今年もムキタケを」と思って出かけた。しかし、ムキタケの生えていたブナの立ち枯れは他のキノコに代わっていた。そのかわり、ミズナラの木からヤマブシタケが生えているのを見つけた。10メ−トル以上の高さのところで、採ることも写真撮影もままならなかったが、見つけたことだけでも満足できた。
 最初に登ったときのクチベニタケの群落に引かれて古峰原に足繁く通っているが、ムキタケ、ヒメベニテングタケ、灰紫色のキノコ、ヤマブシタケと私を呼ぶキノコは増える一方である。

男もすなりきのこ料理

 私が研究会に入った目的は、大部分の会員と同じで、食用になるキノコを覚えて楽しむためである。個人的にキノコ採りに行くときは、できるだけ土曜日に行き、その場で同定できたキノコはその日のうちに塩水洗いまですませ、いつでも食べられる状態にする。山で同定しきれなかったキノコは、土曜の夜から日曜の午前にかけて、再度図鑑と比べたり、スケッチをしたり、追加の写真撮影をしたりする。そんな訳で、料理できるのは日曜日の3時から5時の間の2時間以内である。また、家族は気味悪がって一切手を出さないから、材料が多く、出来上がりのボリュ−ムのある料理もできない。女房の主義で揚げ物もやらせてもらえない。制約だらけではあるが、「キノコ狩りガイドブック」(川嶋健市・伊沢正名共著、長岡書店発行)や「きのこ・山野草」(畠山陽一著、ホ−ムライフ社発売)を参考にそれらしき料理を作るようにしている。
 一応、きのこの種類ごとに食べ方を変えるので、1回に採ってくるキノコは5種類どまり、今まで食べたことがないキノコは2種類どまりにしている。何をどういう料理で食べたかは記録に残し、今後の料理法の参考や中毒したときに備えている。こんな食べ方をしているので、研究会に入って4年目になるが、自分で採取して食べたキノコはわずか21種類でカタツムリのような歩みである。
 出来合いの料理に入れた以外の食べ方を並べると

アカヤマドリ傘:バター炒め
茎:ホワイトソース煮
オオモミタケ漬け焼き
キチチタケ野菜炒め
キヌメリガサ、ムラサキシメジ
ハナビラタケ、ハナビラニカワタケ
酢の物
クリタケ、ムレシメジ炒めたあと甘辛煮
ササクレヒトヨタケゆでてマヨネ−ズで
シロキグラゲ湯通したあと牛乳と砂糖で
スギヒラタケ、タマゴタケてんぷら
ツエタケ甘辛煮
ハタケシメジトマトソース煮、ホイル焼き
マリネ
マツオウジ澄まし汁、ホイル焼き、煮物
ムキタケさといもとの煮物



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