きのこ講演会
             
開催日時:2009年2月15日(日)
集合場所:上尾市コミュニティーセンター、視聴覚室
講師:細矢 剛
参加者:20名
世話人:
大久保 彦、富田 稔籾山 清上原 貞美
報告 :
上原 貞美
            
                                               
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 国立科学博物館植物研究部菌類・藻類研究グループ研究主幹 細矢 剛氏の監修により開催された「菌類のふしぎ-きのことカビの仲間たち-」の特別展が成功にいたるまでの過程のお話をしていただいた。
 ここで細矢氏がどのような研究をなさっているか博物館の研究者の紹介記事より引用させていただきました。

 まだまだあるぞ!未知の菌類たち         細矢 剛

■菌類はカビ・酵母・きのこの仲間です。
菌類は、食物(シイタケなど)、発酵食品の製造(味噌・しょうゆなど)、医薬品原料の生産(抗生物質など)等、応用面でも私たちの生活に深く関わっています。

■現在知られる菌類は、世界では約8万種、日本では約1万3千種です。しかし、実際には150万種も存在すると言われており、世界にはもちろん、日本にもまだ多数の未記載の菌類があって、今後の研究が待たれています。

テーマ1:日本のチャワンタケ類の菌類相を明らかにする

■チャワンタケとは菌類の2/3を占める子嚢菌類というグループの1/3が所属する大きなグループです。子嚢菌類の中では原始的なグループと考えられ、系統分類学的に整理されることが求められています。

■チャワンタケ中最大のグループ「ビョウタケ目」は、子嚢菌類中2番目に種数の多いグループでもあります。これらの菌は非常に小さなきのこを形成し、研究が進んでいません。私は、この小さなグループに特に注目し、研究しています。その結果、いままでに多くの日本新産種(日本で初めて見つかった)、新種(初めて記載された)がみつかりました。

テーマ2:ヒアロスキファ科の菌類の系統分類

■ビョウタケ目に含まれるヒアロスキファ科の菌類は、円盤状の頭部が柄に付いた非常に小さなきのこを形成します。
これらの中には有用な生理活性物質(クスリのもと)の生産菌も含まれ、重要な生物資源として期待されます。
しかし、まだ分類学的に整理されていません。
私は、分子系統学的手法によってのグループの再整理をめざして研究しています。
 以上です。
 
 当会の会員諸氏はほとんどの方がご覧になったと思いますが、一応この企画展のテーマの概要を引用しておきます。

カビというと、どんな印象をお持ちですか?
お風呂場の大敵?食物を腐らせるやっかいもの?
では、きのこについてはどうですか?・・・森の妖精?秋の味覚?
「きのこ」というと、“かわいい”、“おいしい”などプラスのイメージなのに、
カビにはマイナスイメージがつきまとうのはなぜでしょう?
カビときのこはどちらも菌類という仲間です。

では、「菌類」とは何でしょうか?
簡単にいえば、きのこ・カビ・酵母の仲間です。基本的には菌糸という糸状の構造からなり、分解と吸収によって栄養を得る、真核生物です。菌類は動きませんが、動物でも植物でもない生物群です。そんなものが私たちとどんな関係があるかって?おおありです。パンやシイタケを食べたことがない人はあまりいないでしょう。
また、お酒や味噌・しょうゆ・かつおぶしなどは菌類の働きでできあがります。クスリの中にも、菌類からつくられるものがあり、菌類は、むしろ私たちの生活と密接な関係がある生物なのです。

しかし、菌類は学校教育ではあまり扱われていないばかりでなく、大学などの専門教育でも分類など基礎的な事項が扱われることはめったにありません。菌類のお世話になっている国でありながら、菌類は社会的に十分認知されているとはいえません。ところが、最近では、カビがキャラクターとして登場するマンガ「もやしもん」が売上300万部の大ヒットを博し、菌類が脚光を浴びています。また、高松塚古墳のカビ被害などから、文化財保護などの点からも菌類の重要性の認識が確立されつつあります。良かれ悪しかれ、菌類という生物が存在感をもって認識されつつあるといえましょう。

菌類の自然界での主な役割は分解と考えられてきました。しかし、菌類は陸上・海水・陸水などあらゆる生息域に存在し、他の生物とも寄生・共生関係をもちながら、特に森林の環境維持に関わる重要な生物であることが判明してきました。現在知られる菌類は約8万種、そして、推定される現存種は150万種ともいわれ、陸上植物やほ乳類の種数より遙かに多く、生物界では昆虫に次ぐ第二の多様性をもつグループなのです。
また、系統関係についてもここ10年の間に次々と新しい発見がなされた結果、分類・系統に関する知識が塗り替えられています。本展では、社会的にも注目されつつある菌類の深い世界を紹介いたします。
 以上のように語られています。
 この話が始まったのが2004年、実に五年もの歳月を経て完成したわけで、氏の苦労話や、裏話を直接お聞きすると並大抵の努力と辛抱なしには、今回の成功にはいたらなかったであろうと推察する次第です。
 なお2008年10月11日〜2009年1月12日までの観客総動員数は165390名ということでした。

 以上



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