野外観察会

    開催日:2010103(日)

    集合場所:小川町・県立小川げんきプラザ駐車場

    観察地区:小川げんきプラザ周辺

    参加者:会員33名、一般11名

    世話人:福島 隆一、大館 一夫、大久保 彦

    報告:福島 隆一



大舘氏撮影    他はいずれも河野氏撮影
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定刻の930分より会長の福島より挨拶があり、事務局から諸注意や諸連絡が行われた。

子供連れの一般会員11名参加が有り会長が先導し、会員数人が一般参加者の間に入り、万葉の道から本館方面へ上りながら勉強会を行った。多くの会員の方達は、思い思いの方向に散らばり観察を行った。正午過ぎには駐車場に集まり昼食をとりながらキノコ談義に花を咲かせていた。午後3時ごろまで同定が行われたが、いつもの事ながら思いもよらないキノコが飛び出してくる。アカヒダカラカサタケは神戸森林植物園で何度かお目にかかっただけで埼玉では始めて見た。ハダイロニガシメジも久しぶりに出逢った。ハラタケ属も難しくて見ただけでは判らない。ナカグロモリノカサのタイプも数種有りそうだし、ハラタケモドキは変種が多く判別に苦しんでしまう。今回の菌は、培養菌糸の成長が遅いタイプでありハラタケモドキである可能性がある。オオシワカラカサタケも培養して確信がもてた。ケモミウラモドキは始めて逢ったキノコである。ササクレキイボカサタケも久しぶりに出逢ったキノコである。サルノコシカケの仲間ではコルクタケやカタオシロイタケが目新しい報告と思う。今回ボタンタケの一種が見られたが、きのこの原木栽培をしていると時々見る事ができる。ヒポクレアの仲間の不完全世代はトリコデルマと呼ばれ、キノコの菌糸を溶かして食べてしまう害菌であり、土居氏により多くの種(日本産樹木寄生菌目録 小林享夫氏386392)が報告されている。

 

残ったキノコを全て持ち帰り、培養したり、腐朽の様子や胞子紋を見たりして遊んでいるが、遊び甲斐のある生き物である。培養したキノコの菌叢や菌糸成長速度等について以下のキノコに付いて報告する。腐生菌用培地は1/2PDA、1/2MYG、1/3MYG等を使用。菌根菌用培地はmMMN、1/2mMMN、1/5mMMN、G−1、G−5などの寒天培地を使った。なお種名の後の(A)〜(D)の記号は菌糸の成長を表すものであり(A)は2週間ほどで菌糸が培地全体に伸長する事を表す。(B)は1ヶ月程度で蔓延する事を表す。(C)は蔓延するのに1ヶ月以上掛かるものや組織片から数cmしか伸びないもの等を表す。(D)は組織片の周辺に菌糸が密集し、培地全体に伸長しない状態を表す。菌根菌などで多く見られる。但し培養温度は2025℃程度である。

オオシワカラカサタケ(A)イタチナミハタケ(A)菌糸は僅かに黄土色ががった白色、成熟すると組織片周辺にパッチ状菌糸が盛り上がる。 ウスヒラタケ(A)成長の速い白色菌糸。 ミヤマザラミノヒトヨタケ(A)菌糸束をつくらず気中菌糸が多数成長。 ツヤウチワタケ(A) ハカワラタケ(A)木材腐朽菌特有の白色の厚い菌膜を造る。

ミドリスギタケ(A)成長の速い純白の菌糸が伸長する。

 

キツネノチャブクロ(B)栄養菌糸中の組織片より多くの根状菌糸束を伸ばす。 ユキラッパタケ(B)白色の気中菌糸が伸長。 ヤケアトツムタケ(B)菌糸が成熟してくると黄土色になり培地も赤みを帯びた黄土色になる。 アカチャツエタケ(B)1/2MYG培地で旺盛な菌糸成長か見られる。組織片の周辺は培地が次第に褐変する。エセオリミキ?(B)1/2PDA培地でも菌層は薄い。 ボタンタケsp. (B)菌糸は培地に潜る様に伸張する。培地は次第に褐変する。バクテリア汚染などの周辺ではトリコデルマ特有の緑色分生胞子を形成する。 コハラタケ?(B)菌糸は白色、成長途中で子実体原基を形成する。

 

ナラタケモドキ(C)組織片より薄茶色の細かい呼吸菌糸が伸び、培地が黒褐色になって来ると針金状、根状菌糸束が急速に伸長する。 トゲシロホウライタケ(C)組織片周辺にイタチナミハタケ様の肌色がかった黄土色の菌糸が顆粒状になる。 ウスキモリノカサ(C)菌糸は培地に潜り込んで伸長するため白色菌糸という感じがしない。 ハラタケモドキ?(C)菌糸は肌色がかった白色、菌糸成長は遅い。 シロシバフタケ(C)富栄養培地では、菌糸密度が高くなり菌糸の色は肌色がかって見えるが、貧栄養培地では白色菌糸である。 アカヒダカラカサタケ(C)富栄養培地では培地が褐変し菌糸成長が悪い。菌根菌様の1/2mMMNやmMMN培地で菌糸成長が良好である。 

 

ナカグロモリノカサ?(D)菌糸は白色で成長は極度に遅く成長途中で僅かクレゾール臭がある。クレゾールモリノカサは子実体も成長菌糸も強烈な臭いである。 カキシメジ(菌根菌)(D)菌根菌用の培地を使わないと培養が難しい。 アカキツネガサ(D) ツブカラカサタケ(D) シロサクラタケ?(D)何れも菌糸成長の遅いタイプのキノコであり、組織から栗の毬状の白色剛毛状菌糸が伸長してくる。落ち葉の下の栄養菌糸を見ると、真っ白の菌糸が旺盛に伸長しているので、培地の条件が異なれば行動が違ってくるのは当然であり、あくまでも寒天培地上の話である。mMMN培地などで良好である。 アシボソシロシメジ(菌根菌)(D)菌根菌であるが腐生菌用の培地でも菌糸は成長する。菌糸は白色である。 

 

モリノハダイロガサ(菌根菌)組織より菌糸が発菌のみ。 ハダイロニガシメジ(菌根菌)汚染により失敗。 ケモミウラモドキ(菌根菌)汚染により失敗。 セイタカイグチ(菌根菌)途中から汚染が広がり失敗 セイタカイグチの菌糸は培養をうまく行えば獲れそうである。

確認種

(ハラタケ類)

ヒラタケ科    ウスヒラタケ


ウスヒラタケ  撮影  河野茂樹

ミミナミハタケ科 イタチナミハタケ 

ヌメリガサ科   モリノハダイロガサ

キシメジ科    ウスムラサキシメジ、サマツモドキ、アシボソシロシメジ(青木993)

         ハダイロニガシメジ(青木748)、ナラタケモドキ、エセオリミキ?

ハダイロニガシメジ 撮影 河野茂樹              アカチャツエタケ  撮影  大久保 彦

 ユキラッパタケ、アカチャツエタケ、モリノカレバタケ、サビイロオチバタケ(池田215)、トゲシロホウライタケ(青木112)、シロシバフタケ(青木1339)、サクラタケ、シロサクラタケ?

テングタケ科   タマゴタケ、ドクツルタケ近縁種

ウラベニガサ科  カサヒダタケ

ハラタケ科    アカキツネガサ、ツブカラカサタケ、ウスキモリノカサ、ナカグロモリノカサ        、ハラタケモドキ?ハラタケ属2種、オオシワカラカサタケ
ナカグロモリノカサ 撮影 河野茂樹     オオシワカラカサタケ 撮影 河野茂樹

 クリイロカラカサタケ、アカヒダカラカサタケ

アカヒダカラカサタケ   撮影   河野 茂樹

ヒトヨタケ科   ミヤマザラミノヒトヨタケ


ミヤマザラミノヒトヨタケ 撮影 河野茂樹

モエギタケ科   ヤケアトツムタケ、ニガクリタケ


ニガクリタケ 撮影 河野茂樹

フウセンタケ科  キヌハダトマヤタケ、ミドリスギタケ

チャヒラタケ科  クリゲノチャヒラタケ

イッポンシメジ科 クサウラベニタケ、ケモミウラモドキ、ササクレキイボカサタケ(池田657)

イグチ科     アワタケ、ヌメリイグチ

オニイグチ科   セイタカイグチ


セイタカイグチ 撮影 大久保 彦

ベニタケ科    ベニタケ属

チチタケ科    キチチタケ、ヒロハウスズミチチタケ、ハツタケ


ハツタケ  撮影  大久保 彦

(ヒダナシタケ類)

シロソウメンタケ科 フサタケ

ウロコタケ科   チャウロコタケ

サルノコシカケ科 ヌルデタケ、アオゾメタケ、カワラタケ、チャカイガラタケ、カイガラタケ、         ツヤウチワタケ、ヒイロタケ、ホウロクタケ、シックイタケ、
               ハカワラタケ、ウズラタケ、ツガサルノコシカケ、オオミノコフキタケ、
         ネンドタケ、ネンドタケモドキ、ニクウスバタケ、ホウネンタケ

               コルクタケ、カタオシロイタケ
ニクウスバタケ  撮影  河野茂樹        コルクタケ表面          コルクタケ  管孔  撮影  河野茂樹  

 (腹菌類)

ツチグリ科    ツチグリ


ツチグリ 撮影 河野茂樹

ホコリタケ科   キツネノチャブクロ、タヌキノチャブクロ、シバフダンゴタケ、ノウタケ


ノウタケ  撮影  河野茂樹

(キクラゲ類)

シロキクラゲ科  ハナビラニカワタケ

 (子嚢菌類)

ツチダンゴ科   ツチダンゴ

キンカクキン科  アケビタケ

ズキンタケ科   モエギビョウタケ

クロチャワンタケ科 オオゴムタケ

バッカクキン科  ミヤマタンポタケ

ニクザキン科   ボタンタケsp,

青木の注釈は青木実氏の日本キノコ図版

池田の注釈は池田良幸氏の北陸のきのこ図鑑

     以上78種

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