■川越観察会

   開催日:2011年6月19日(日)

   集合場所:川越・水上公園

   観察地区:川越周辺平地林(赤坂の森公園、下松原地区、水上公園周辺、智光山公園)

   参加者:32名(会員31名、非会員1名)

   世話人:藤野英雄、大久保彦、西田誠之

   鑑定人:福島隆一、大館一夫、近藤芳明、富田稔、藤野英雄、吉永潔、西田誠之、大久保彦
   
   野草・樹木観察指導:吉永潔、宮井正彦
   
   報告:西田誠之






今年最初の観察会は、例年通り川越水上公園に集合、赤坂の森公園および下松原地区の2カ 所を中心に観察収集を実施した。
 この日に至るまで、東北宮城沖を震源とする大地震、大津波襲来という未曾有の大難に見舞われ、被災地の惨状および福島原発の危機的状況が連日報道され て、 なかなかきのこにも専念出来ない日々が続いていた。川越周辺地区は福島原発から200km近くも離れているが、それでも放射能の影響を懸念せざるを得ず、 私も今年採取したハルシメジやアミガサタケを、周辺の落ち葉とともに、検定用として筑波の森林総合研究所に送付してきた。
 そんな日々であったが、会としては特に被った障害もなく、待望のこの日を迎える事が出来たのは何より嬉しいことであった。
 梅雨の最中で毎年心配される天気は、、、というと、一昨日、昨日と二日続けてかなりの雨が降り、気温も低めだった。朝方にはその名残の雲が空を覆い、少 し 雨も降った。私は早朝家を出、赤坂の森公園に寄って二三のきのこの写真撮影をした後、水上公園に向かった。管理事務所に挨拶した後、皆さんを待ちながら準 備をしていると、日差しも出て、空はぐんぐん明るくなり輝きを増してきた。
 集合予定時間には、30名を超える会員が集まった。お馴染みの顔、今年初めて会う顔、新入会の若い方のお顔もあった。どの顔も、またこうして集まること が 出来た喜びと「今年も、さあこれから、きのこシーズンが始まるぞ」との期待が溢れているようであった。
 例年、観察を始める前に待ちかねて、既に採集したきのこを持参される会員があるが、何と、今年の、その「先行馬」は、福島会長であった。早めに到着され た が、大きなアカヤマドリ、ヤマドリタケモドキ、アラゲカワキタケの3種を持参されていた。前日、下松原地区の初雁高校周辺の雑木林を下見した時の採集品と のことだった。 アカヤマドリ、ヤマドリタケモドキともに立派な成菌で、驚きをもって迎えられた。「はあー、もうこんなに立派なのが出ているんだ」との、声もきかれた。
 ますます今日の成果への期待が高まる中、福島会長の挨拶、スケジュールの確認後、2グループに分かれて、(赤坂の森を大久保世話人が、下松原地区は藤野 世話人が担当して、)採集場所へ出発した。早帰りの予定のある少数の方のみが、水上公園周辺を探訪された。また、出遅れてしまった私は、近くの智光山公園 を見て歩いた。
 今年から樹木等の植物観察を吉永、宮井、両氏が、担当することになった。
 赤坂の森グループでは、採集に出る前に、吉永さんが園内の主たる樹木の説明をされ、また下松原グループでは宮井さんが資料を配布され、また歩きながら樹 木 の解説を実施されたとのこと。
 すっかり夏の日差しとなった正午過ぎには、大半の方が多くのきのこを採集され、まずまずという感想を漏らしながら、帰ってこられた。
 例年この時期に観察される種は、ほぼ出揃っていたようだが、盛夏のきのこは、遅れ気味のようで、イグチ、テングタケの仲間は少なかった。しかし、今年も 見 事なムラサキヤマドリタケが、また大きなムレオオイチョウタケが採集された。
 私が歩いた智光山公園では、花菖蒲が満開でその周りは多くの人で賑わっていたが、誰も寄り付かない常緑樹のシラカシのうす暗い木陰には、腐朽木にオリー ブ サカズキタケが群生していた。また杉の切株にスギカワタケ(青木仮称)とその近縁種が乱舞していた。
 初出の種としては、赤坂の森で、富田さんに拠ってサビハチノスタケが初めて採集された。錆色化する前の、生まれたての純白の個体だった。目に付いたので 拾 いあげたがそれとは気付かなかったとのこと。南方系の希少種とされているが、この時期、場所によっては、多くの落枝(コナラまたは桜)上に、錆色化する前 の、白色の新鮮な個体を見つけることが出来る。関東産のものは、L.Ryvardenが分類したサビハチノスタケ属(Echinochaete)3種の 内、E.russicepsであることが判明している。
 福島会長、大館副会長が、丁寧にかなりの時間をかけて、鑑定にあたられた。毎度馴染みの種であってもないがしろにすることなく、一つ一つ特徴を確認しな が ら、鑑定される態度にはいつもながら頭が下がる。今回も、見落されがちなカレエダタケモドキ等の微小種も、漏らさず同定された。 結果115種を超える採集種から、109種が記載された。 鑑定後の講評では、福島会長が、幼菌〜成菌の過程の姿を観察することの重要性、注目されないがよく見て欲しい種(イチョウタケ等)、正式名の無い仮称種 (スギカワタケ(青木仮称)とその近縁種等)に触れ、解説された。大館副会長は、この日揃って出たキクラゲ、アラゲキクラゲ、シロキクラゲ、ツブキクラゲについて、また質問に答え て、アワタケ、クロアザアワタケ、キッコウアワタケ、コウジタケの見分け方、シミイッポンシメジの謂れ等について説明された。私が北関東に多いオリーブサ カズキタケや、ようやく学名のついたコツブチャツムタケ(旧仮称ナメシスギタケ)、スギカワタケ(青木仮称)とその近縁種等をとりあげて説明した後、吉永さんが子嚢菌について、近 藤さんが冬虫夏草について、解説された。(こうした専門分野の菌に絞って究明を続ける、お二人の存在は、会にとって極めて貴重であり、かけがえが無い。私 も弟子入りを希望しているが、困難な学究の路であり生半可では出来ないと覚悟しなければならないだろう。)続いて、同じく学究の徒である大久保さんが、福 島原発の放射能漏れによる野生きのこへの影響、放射能測定のことについて、言及された。
 今回はじめて観察会に参加された藤野夫妻からは、鑑定時にも種々新鮮な質問があったが、講評終了後に、ご主人が初参加の感想を述べられた。
(また光保子夫人には、一篇のPOEMのような、感性溢れる感想文を書いて戴いた) 今後の活躍を大いに期待したい。
 散会後、福島会長、藤野、大久両世話人には、御礼の為、公園の管理事務所に出向き、会報を届けて戴いた。いつも快く会場を提供してくださる水上公園の関 係 者の皆様には、この場を借りて改めて感謝の意をお伝えしたい。
 本来なら私も伺って直接御礼を申し上げる予定だったが、、ハプニングの為それができなかった。―最後に余計な私事報告で恐縮ながら−当日午前5時に、娘 が 結婚後11年目にして女児を初出産した故、面会時間に間に合うよう大急ぎで帰路に着いた次第、、、しかし、その努力にも関わらず、家族からは、孫よりきの この方を大事にする「ヤクザ爺ちゃん」とされ、一段とまた“格付け”を下げられて今日に至っている。
 ―以上、本観察会が無事に終了したことと、皆様のご協力に深謝して、報告を終わります。



人生初、 野生キノコ「杖茸(ツエタケ)」の味
第1回目の参加、 「赤坂の森」へ福 島会長方と一緒に向かいました。
散策中、ふとしゃがみ込んだ福島会長の手元には、
ほっそりとした焦げ茶色のキノコが。
「これはね、ツエタケと言うんですよ」そう私たちに話しながら
リュックからショベルを取り出し、キノコの周辺をゆっくりと掘り出しました。
「ツエタケ?」と問い直す私に、「うん、そう。今からその理由を見せてあげましょう」と、
 深さ15〜20センチほど掘ったそのキノコを根元から取り出し、
「ほらね、このキノコは地中深く長く根を伸ばすんです。その根が、長くて”杖”のようだから、”杖茸(ツエタケ)”という名前がついたんですよ」
そういって、掘り出した根っこの先を見せてくれました。
「本当ですね!長い!」名前の由来を理解できた途端、
ツエタケが急に身近なキノコに感じられるようになりました。

そんな風にして「赤坂の森」を歩くこと2時間強、
たくさんのキノコを見つけながら、お話を伺いながら、
あっという間に野外観察会の時間は終了、
その後の判定時間では 皆さんが発見された、さらにさらに沢山のキノコが・・圧巻でした。
さて。 帰宅後早速、「ツエタケ味見会」を開催いたしました。
人生初、自分達で採った野生キノコの味は・・・
「・・・ん?ん〜、うん、おいしい?食感がいいね!」
味というよりは、食感が見事な、ツエタケ。という印象でした。

さて、ツエタケから始まった野生キノコとの付き合い、
これから私の人生に長く深く根を伸ばし、
いつしか、私を助けてくれる支えのような存在として、
一緒に歩めることを祈りつつ。

皆様、今後ともご指導ご鞭撻の程、何卒よろしくお願い申し上げます。

藤野光保子

☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡



 確 認 種

(ハラタケ類)


ヒラタケ科 :アラゲカワキタケ、マツオウジ

ヌメリガサ科 :モリノハダイロガサ(変形)

ミミナミハタケ科 :イタチナミハタケ

キシメジ科 :ウラムラサキ、キツネタケモドキ、ムレオオイチョ ウタケ、アマタケ、
 モリノカレバタケ、カミホウライタケ(青木仮称)、ツエタケ、ハナオチバタケ、
 オオホウライタケ、ダイダイガサ、ヒメカバイロタケ、オリーブサカズキタケ、コノハシメジ
カミホウライタケ(青木仮称)
撮影 西田誠之
オリーブサカズキタケ
撮影 西田誠之
ウラムラサキ 撮影 河野茂樹 ツエタケ 撮影 河野茂樹

テングタケ科 :テングツルタケ、ツルタケ、テングタケ、ガンタケ
テングタケ 撮影 河野茂樹

ウラベニガサ科 :ヒイロベニヒダタケ

ハラタケ科 :ザラエノハラタケ、ウスキモリノカサ、キツネノカ ラカサ、ハラタケ属2種
ウスキモリノカサ 撮影 河野茂樹

ヒトヨタケ科 :キララタケ、コキララタケ、イタチタケ、イヌセン ボンタケ
イタチタケ(幼菌) 撮影 西田誠之 イタチタケ(成菌) 撮影 西田誠之 イタチタケ(老菌) 撮影 西田誠之

オキナタケ科 :フミヅキタケ

モエギタケ科 :ヤケアトツムタケ、ニガクリタケ

フウセンタケ科 :キヌハダトマヤタケ、コバヤシアセタケ、シロニセ トマヤタケ、アセタケ属2種、
 アカヒダワカフサタケ、ミドリスギタケ、コツブチャツムタケ

コバヤシアセタケ 撮影 河野茂樹 コツブチャツムタケ 撮影 河野茂樹

チャヒラタケ科 :クリゲノチャヒラタケ
クリゲノチャヒラタケ 撮影 富田稔

イッポン シメジ科 :ヒ カゲウラベニタケsp、アオエノモミウラタケ、 シミイッポンシメジ

ヒダハタケ科 :イチョウタケ

イグチ科 :キッコウアワタケ、クロアザアワタケ、コウジタ ケ、ヤマドリタケモドキ、
 ムラサキヤマドリタケ、イロガワリ、アカヤマドリ、コショウイグチ

ムラサキヤマドリタケ 撮影 河野茂樹 アカヤマドリ 撮影 富田稔

ベニタケ科クロハツ、ヤブレベニタケ(アカフチベニタケ)、ケ ショウハツ、チギレハツタケ、
 ヒビワレシロハツ、アイバシロハツ、ウグイスハツ、キチャハツ、 ベニタケ属数種、
 ツチイロチチタケ(池田)、チョウジチチタケ
チョウジチチタケ 撮影 河野茂樹

(ヒダナシタケ類)

アンズタケ科 :クロラッパタケ

カレエダタケ科 :カレエダタケモドキ

コウヤクタケ科 :シロコメバタケ

ウロコタケ科 :チャウロコタケ、クシノハシワタケ

スエヒロタケ科 :スエヒロタケ

タコウキン科 :ヤケイロタケ、ミダレアミタケ、ニッケイタケ、ニ クウスバタケ、センベイタケ、
 カワラタケ、アラゲカワラタケ、ヒトクチタケ、ホウロクタケ、チャミダレアミタケ、
 エゴノキタケ、チャカイガラタケ、サビハチノスタケ、カイガラタケ、ホウネンタケ、
 ツヤウチワタケ、ツヤウチワタケモドキ、アオゾメタケ、アミスギタケ、スジウチワタケモドキ、
 ヒイロタケ、クジラタケ、チリメンタケ、ウズラタケ、オシロイタケ、ダイダイタケ

ヤケイロタケ 撮影 西田誠之 ウズラタケ 撮影 西田誠之
サビハチノスタケ 撮影 西田誠之
(観察会翌日撮影)
サビハチノスタケ(管孔面)
撮影 西田誠之
サビハチノスタケ(剛毛体)
撮影 西田誠之

タバコウロコタケ科 :ネンドタケ、ネンドタケモドキ

(腹菌類)

ツチグリ科 :ツチグリ

ニセショウロ科 :ヒメカタショウロ

ホコリタケ科 :ノウタケ、ホコリタケ

アカカゴタケ科 :サンコタケ
サンコタケ 撮影 河野茂樹

(キクラゲ類)

シロキクラゲ科 :シロキクラゲ

キクラゲ科 :キクラゲ、アラゲキクラゲ
シロキクラゲ 撮影 西田誠之 キクラゲ 撮影 河野茂樹

ヒメキクラゲ科 :ツブキクラゲ

アカキクラゲ科 :ツノフノリタケ

(子嚢菌類)

チャワンタケ科 :オオチャワンタケ

バッカクキン科 :オサムシタケ

クロサイワイタケ科 :クロコブタケ、カノツノタケ?

上記他―子嚢菌 2種
オサムシタケ 撮影 河野茂樹 カノツノタケ? 撮影 河野茂樹

        (以上115種、内―同定種109種)



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