■きのこ講演会

開催日: 2012年2月18日(土)
開催場所: 川越西文化会館(メルト)
講演: 柴田 尚 博士
 (山梨県森林総合研究所森林研究部長)
参加者: 30名、会員外1名
担当: 事務局、大久保 彦
報告: 富田 稔
写真撮影: 河野 茂樹


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テーマ:中部亜高山地帯林で見られるキノコ

講 師:柴田尚 博士(山梨県森林総合研究所森林研究部長)

 

 柴田氏は筑波大学大学院農学研究科博士課程で単位取得後、1982年に山梨県林業試験場・吉田分場(現在の富士吉田試験園)に入り、それ以降30年間、富士山を中心に亜高山帯林に発生するキノコの生態を研究されてきた。そして、私たちの手に入りやすいものとして、『山梨のきのこ』『森のきのこたち』を著した方である。

 今回は『森のきのこたち』のなかの「きのこを通して森を見る」で述べられている、種々のタイプの森林の樹齢と発生するきのこの関係を中心に講演していただいた。

 

T.富士山のきのこ

 1982年に、富士山の構成する樹の樹齢が異なるカラマツ林、シラビソ・オオシラビソ林、コメツガ林に固定調査地点を設け、樹齢の経過とともに発生するきのこの種類と量がどのような変化するか調査した。

 カラマツ林でもシ ラビソ・オオシラビソ林でも樹齢の若い樹で構成されていた林は年数の経過とともに多様性指数が大きくなる(種類が増えたり、発生量の偏りが小さくなる)。 樹齢が大きい樹で構成された林では多様性指数は一定になる。カラマツ林の多様性指数はシラビソ・オオシラビソ林やコメツガ林のそれより小さい。

 樹齢の経過ともに発生するキノコが変化するが、カラマツ林では初期のみに発生する種類から20年後以降に発生する種類まで4グループに分類できる。シラビソ・オオシラビソ林では数年後から発生する種類から50年後から不定期に発生する種類までの5グループに分類できる。

 また、カラマツ林とシラビソ・オオシラビソ林、コメツガ林との間の共通種はわずか2種類しかないが、シラビソ・オオシラビソ林とコメツガ林との間の共通種は21種類もある。

 

U.富士山と八ヶ岳の比較

 八ヶ岳は富士山に はない、ダケカンバ・ハイマツの林があり、カラマツ林がないために発生するキノコの種類に違いもあるが、共通種でも発生量が大きく異なる種がある。コゲイ ロハツタケ、フジウスタケ、ヤマドリタケなどは富士山の方が発生量がはるかに多く、ニオイハリタケモドキは八ヶ岳の方が発生量がはるかに多い。ヌメリササ タケ、ショウゲンジ、ドクヤマドリなどは同程度の発生量である。

 ベニテングタケは富士山で発生するものと八ヶ岳で発生するものとは特徴が異なる。

 ショウゲンジの発生初確認日が八ヶ岳では年々早くなっているように思われるが、富士山では逆に遅くなっている。富士山では夏の暑さが菌糸の伸長に影響がなく、子実体原基をつくる温度低下が年とともに遅くなる傾向にあるためと思われる。

 また、温暖化の影響と思われる減少として、1980年代までは年による有効積算気温の変動が小さくきのこの発生量が安定していたが、1990年代以降は有効積算気温の変動が大きくなり、発生量の変動も大きくなった。

 

 「富士山のキノコ」では図表がほとんどで統計学の用語を交えた説明に面食らった会員もいたと思うが、一つのテーマについて2030年間継続することによって得られた貴重な知見を拝聴することができた。最後に述べられた「天候を見て富士山に行け」の言葉には同感である。



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