2015年度日本菌学会菌類観察会

              「埼玉フォーレ」の報告
     

          2015年度日本菌学会菌類観察会は、「日本菌学会関東支部」「神奈川キノコの会」「千葉菌類談話会」「菌類懇話会」「幼菌の会」及び当「埼玉きのこ研究会」が共催して、埼玉の地で3日間に渡って、実施されました。

 福島隆一会長が実行委員長を務めることとなり、当会からも実行委員として、また観察地に選定した「武蔵丘陵森林公園」の案内役として、多数の会員が参加し、フォーレを推進しました。特に観察地として選定した「武蔵丘陵森林公園」については、同公園の温かいご厚意、多大なご協力の基に事前に観察会を複数回実施し、園内をくまなく把握し観察体制を整えました。観察日当日は、その経験から公園内を5地区に区分して、30名の会員がそれぞれの担当地区に分散、参加者を先導しました。結果、多くのきのこの観察、採集に寄与することが出来ました。

 本観察会は、他にも、有意義な講演や、展示、研究発表等が盛り込まれており、それらは、皆、各会から選出された実行委員各位が事前に心を一つにして多くの準備を重ねた上に実施されたものでした。その結果、大変実り多い観察会として、終了することが出来ました。

 以下にその概要を報告するとともに、武蔵丘陵森林公園のご担当官の皆様、各会の推進者、ご関係者の皆様に厚く御礼申し上げます。
 

実 施 内 容

期  間:2015925()27()

宿・会場:森林公園四季の湯温泉ホテル・ヘリテイジ

埼玉県熊谷市小江川228

観察地:国営武蔵丘陵森林公園 

埼玉県比企郡滑川町及び熊谷市

参加者数:126

実施行事、プログラム

日 程  

内  容

925

 

1300 参加者集合、受付(ホテル ヘリテイジ) 

1400 開会式,講演会(会場:アスパイア研修センター「カエサル」)

司会 松井英幸(菌類懇話会)

主催者挨拶 日本菌学会副会長 矢口行雄

祝辞 元衆議院議員 立正大学客員教授 小島敏夫様

 1430 講演会

司会 小山明人(菌類懇話会)

  「日本産ハナビラタケの生物学的種について」

       埼玉きのこ研究会会長 福島隆一

  「糞生菌やアンモニア菌類等について」

       千葉県立中央博物館 吹春俊光

 1600 オリエンテーション

   フォーレの日程説明、日本菌学会からのお知らせ

        後藤康彦、名部みち代(日本菌学会)

   新分類群、同定方法、手順について、

        保坂健太郎(国立科学博物館)

   観察地「武蔵丘陵森林公園」について

            西田誠之(埼玉きのこ研究会)

   明日の予定について

            大舘一夫(埼玉きのこ研究会)

1800 夕食、懇親会(会場 オーロラホール)

      来賓挨拶 武蔵丘陵森林公園 都市緑化植物園長

    坂部 高矢 様

2100 二次会

926

815 集合、記念撮影

バスに分乗して採集地へ出発

930森林公園着、南口、北口、中央口、西口より入場

   A、B、C D1、Ⅾ25地区に分かれて、観察、採集

1330観察終了

1400 ホテルヘリテイジ全員帰着

1500 同定会(会場:アスパイア研修センター「研修室」)

各自採集種の同定票記入、分類テーブル上に提出、展示

顕微鏡観察、DNA検出作業等

1800 夕食

1900 採集品整理、保存種等分類

同定内容発表、解説者による説明 

乾燥標本作成作業等

2100 実行委員による反省会

    慰労会 
 

927

830 まとめの会、(会場:アスパイア研修センター「カエサル」)

  閉会式

  閉会挨拶 

          大舘一夫(埼玉きのこ研究会)

       各会代表 挨拶

        ― 第一次 解散 ―

(以下、残留参加者のみ聴講して、実施)

1000特別企画「今、きのこの放射性セシウムは」

 講 演

   司会:糟谷大河(千葉科学大学) 

  「はじめに」 

      保坂健太郎(国立科学博物館)

  「生態系におけるきのこの放射性セシウム」

   小松雅史(森林総合研究所)

報告 各地のきのこ

    司会:保坂健太郎(国立科学博物館)

「福島県産野生きのこの放射性セシウム濃度の動向(
2014年迄の状況)」

      広井 勝(郡山女子大学大学院非常近勤講師)

 

「千葉県および茨城県における野生きのこの放射性セシウム濃度の動向(20142015年)」

       糟谷大河(千葉科学大学)、大森茉耶(千葉科学大学)

       後藤康彦(菌類懇話会)保坂健太郎(国立科学博物館)

「栃木県内で採取された野生きのこの放射性セシウム」

     大橋洋二(栃木県林業センター主任研究員)

「富士山の野生きのこの放射性セシウム(20112015年)」

                後藤康彦(菌類懇話会)桧垣正吾(東京大学アイソト
      ープ総合センター
)

*資料提供:「2014年までの宮城県自生キノコの放射能汚染の動向」

      木野康志・入澤歩

問題提起、今後の課題について

         保坂健太郎(国立科学博物館)

1200 実行委員会解散

    全日程終了 

(*敬称はご来賓のみにて記載しました)

 主要行事概観―

(初日)

 宿泊場所になったホテルヘリテイジには、初日から、折からの本降りの雨にも拘わらず、100名を超える参加者が参集されました。開会式でご来賓の祝辞を戴いた後、すぐに講演会に入り、満席の会場で、福島隆一、吹春俊光、両氏の有意義な講演、「日本産ハナビラタケの生物学的種について」および「糞生菌やアンモニア菌類等について」を熱心に聴講しました。お二人とも映像を駆使して、自ら体験した研究内容を発表され、その感銘深い内容に終了後も質問が相次ぎ、時間が足りないことが痛感されました。
 その後も予定のプログラムの制限時間を大幅に超過して、進行しました。
 会場には、愛知県の田中朝嶺顕彰会代表中條長炤氏が持参された、本邦菌類研究の草分けである田中朝嶺に関する貴重な資料の展示もあり、中條代表の説明も聴くことが出来ました。また、片隅には、当会の会報「いっぽん」各号が並べられていましたが、それに見入る人もありました。

 夕刻には、温泉入浴もそこそこに、恒例の懇親会が始まり、大いに盛り上がりました。来賓として、森林公園、都市緑化植物園長の坂部高矢様もお出で下さり、心暖まる挨拶をして下さいました。舞台には、若い研究者や将来の菌学者の卵達等が次々とあがり、きのこへの思いのこもったパフォマンスを演出してくれました。各種の銘酒、ホテルの丁寧な料理はもとより、当会特製のきのこ汁も大好評で、お代わりをされる方が続出しました。終了後は温泉で疲れを癒した後、遅くまで、きのこへの思いを語り合った参加者も多かったようです。

2日目)

 翌日の観察日当日は、一番気になっていた前日からの雨も降り止み、穏やかな日和となり、観察者全員が予定通りバスに分乗して、大挙して森林公園に向かいました。

 当会会員30名が5グループに分散、先導して、入園、その後は、各自目当てのきのこを求めて、観察、採集に専念しました。
 昼食をはさんで、
3時間余り、幸い、多くのきのこに恵まれ、定刻迄に観察、採集を終了し、無事にホテルに帰着しました。帰着後は、採集者が銘々持ち帰ったきのこを鑑定し、同定票に種名や特徴、採集場所を記載、展示場に提出しました。その結果、会場には、溢れんばかりのきのこが並びました。

 興奮と熱気が渦巻き、思い思いにきのこを手にして、延々と、同定論議が続きました。

 顕微鏡観察、DNA確認作業も進められ、また貴重種や状態の良い個体が、保存標本として選定され、次々とラベルが張られてゆきました。

大分類ごとに研究者の解説がなされ、その内容に聞き入った後も、多くの人が居残って、なお、多くのきのこに見入っていました。

 これまで心を一つにして、多くの裏業を担って来られた各会選出の準備委員各位、及び、福島会長、大舘副会長はじめ、諸準備を重ねて来た当会会員、そのすべての努力が報われた一時でした。

 21時より、実行委員は、「反省会」を開き、種々の意見交換を行いました。

 その折、今回の観察場所、森林公園において、観察時の注意事項の不徹底による、一部の参加者の残念な行為(歩行禁止区域である自転車道への立ち入り、きのこ採取行為)が発生していたこと、及びそうした異常事態、緊急時の連絡体制の不備等が判明しました。その為もあって、今後のフォーレに向けて、様々な改善策が提案されました。

3日目)

 閉会式の後、遠来の参加者は、帰途につきましたが、なお、特別企画として、野生きのこの放射能汚染の現状が、様々な実地検証によって、報告されました。今後、菌類観察者として何が出来るのか、何を為すべきか、重い課題を残したまま終了しましたが、非常に有意義な「特別企画」でした。

 フォーレ終了後、福島、大舘、西田の3名で、お世話になった森林公園を訪れ、本観察会における不手際を陳謝申し上げ、重ねてこれまでのご厚志の御礼を申し述べました。

本報告においても、伏して、深謝申し上げます。

【配布資料 一覧】

1.冊子(実行委員長巻頭挨拶、日程表、開会式講演会プログラム、

観察地、観察手順、観察時注意事項について、

同定会場案内図、採集品陳列配置図、同定カード記入要領、標本作成手順、

新旧分類体系早見表、

特別企画「今、きのこの放射性セシウムは」プログラム

参加者名簿、宿泊ホテル館内案内図)

2.講演要旨(講演者、福島隆一、吹春俊光)

3.特別企画資料(各発表者による作成資料)

4.観察地「国営武蔵丘陵森林公園公式ガイドマップ」

5.観察エリア区分図

6.森林公園巨木マップ

【実 行 委 員】

福島隆一(実行委員長),赤堀暉生,安藤洋子,飯田強、井上幸子,井本敏和,上原貞美,大久保泰和,大舘一夫,小野義隆,折原貴道,糟谷大河,黒谷秀夫,後藤康彦,小林真吾,小林徹,小山明人,柴田靖,白山弘子,武田敏夫,谷口雅仁,種山裕一,富田稔,長澤栄史,名部みち代,西田誠之,橋屋誠,服部力,平野達也,吹春公子,吹春俊光,保坂健太郎,細矢剛,松井英幸,三村浩康,籾山清,森本繁雄,吉田悦子(50音順)

観察地森林公園の当会会員案内者配置一覧

 

A地区

B地区

C地区

D1地区

D2地区

入園口

南口

南口

中央口

北口

西口

参加者数

29

21

35

22

24

退園口

中 央 口

 

案内者名

福島隆一

籾山 清

橋本 稔

新井基永

橋本啓一

栗原幸子

横山浩行

横山恵子

青森悰二

大舘一夫

村田紀彦

長谷川明

大舘くみ

宮井正彦

野口孝行

西田誠之

富田 稔

野澤 潔

大久保彦

佐伯富美子

武藤治子

小峯喜美代

藤野英雄

吉田考造

葛西俊明

志村隆久

久保善助

 

近藤芳明

栗原晴夫

椙田道行

近藤静子

小笠原敏雄

大曾根武

 

埼玉フォーレ映像

     
    宿所 ホテル ヘリテイジ全景        セミナー会場アスパイア研修センター

(初日)            講 演 会

    
     講演会場を埋めた参加者                       福島隆一氏による講演

(                     写真提供種山裕一氏=TY  

      
     講演中の福島隆一氏(TY)            講演に聞き入る参加者(TY

       
  講演者吹春俊光氏の紹介、司会者小山明人氏        吹春俊光氏の講演(TY

 

    
       講演中の吹春俊光氏(TY)           田中朝嶺に関する展示(TY

 

オリエンテーション

    
    観察地の説明をする西田誠之氏(TY)   明日の予定、観察手順を説明する大舘一夫氏

    
       オリエンテーション終了        埼玉きのこ研究会会報「いっぽん」の展示(TY

懇 親 会

    
     実行委員長挨拶(福島隆一氏)          来賓挨拶  (武蔵丘陵森林公園
                            都市緑化センター園長 坂部高矢 様

  

若き菌学徒達の自己紹介           菌学者の卵の自己紹介
                                和田匠平君(中学一年生)と山下光君(小学六年生)

 

    
     堂々と抱負を述べる山下光君                    女装で応援する大前宗之氏

            飲み、語り、、盛り上る会場

   

    

    

 (2日目)    

観察地 武蔵丘陵森林公園に於ける観察、採集 

                                  出発前、ホテル前に全員集合

観察採集風景

   

             Ⅾ1地区観察グル―プ(森林公園 北口にて)(撮影は吉田考造 以下全て)

    
      
コースを説明する藤野英雄会員       採集地へ誘導する吉田考造会員(TY

     
      早速きのこを発見(TY)             慎重に掘り出す

    
       無事採集して笑顔              海外からの来訪女性も、、        

     
    冬虫夏草(サナギタケ)を発見           貴重種(クリノイガワンタケ)

 

  

                          同定思案中

     
      採集を無事終えて鑑定作業へ      安堵する藤野英雄、大曾根武、葛西俊明、志村隆久会員

C地区観察グループ(森林公園中央口にて)撮影 西田、大久保

    
                      点呼、メンバー確認する富田稔会員                     

   

    
    山田大沼より出発(OH)            中生代の生き残り、チリマツ (針葉樹園にて)

               
                          遠足の子供達と一緒に

                    

              
                       大樹の下、きのこ求めて

                      

                                      きのこのシロへ             古鎌倉街道跡にたたずむ富田稔会員

  
        カキシメジ(OH
       

         
                       園内バスとすれ違いながら
              

B 地 区

  

                 
            観察者を誘導する大舘一夫、村田紀彦会員(HA

           
                           林中へ   

           
                      菌影ちらほらと、、(HA)

           
                       (撮影  大舘 一夫)
 

                                       歓迎中(HA)                  アカヤマタケ(HA

 

                                                    ヤグラタケ(HA 長谷川 明夫

 

    
            アカショウロ(撮影 平野達也氏=HT

                               ミノタケ近縁種(HT)             ヒイロハリタケ(HT

 

    
         イッポンシメジ(HT)         ネンドタケモドキ(HT

    

     
      ハダイロアナタケモドキ(HT)        エビウラタケ(HT

 

                                        カイガラタケ(HT)              シラゲタケ(HT

 

    
      
HT)                     (HT

 

    
             (HT)                  (HT    

    
             HT)                 (HT

        

    
          (
HT)                  (HT

 

    
         (
HT
                               (
HT

    
          (
HT)                  (HT

 

     
             HT)                  (HT

 同 定 会

           
               懸命の同定作業(HA

                 
                      展示準備中の同定会場

       

          

                                            お助けマン登場!       保坂健太郎氏による保存標本作成の説明
同定請負人、種山裕一氏(撮影小山明人氏)  

   

  
   顕微鏡観察(撮影 種山美香様=TM)

   
     テングタケ属が多かった(TM

熱気あふれる会場

  
         柴田靖氏によるテングタケ属の説明(TM

    
    橋屋誠氏によるチチタケ属の解説(TM)      安藤洋子氏によるアンズタケ、
    ラッパタケ、ホウキタケ他の解説(TM

   

    
      正井俊郎氏によるイグチ類の解説    服部力氏によるタマチョレイタケ属他の解説

    
    佐々木廣海氏による地下生菌の解説      三村浩康氏による冬虫夏草類の解説

 展示されたきのこから

                   
                         ベッコウタケ(HT

 

    

  ウロイボセイヨウショウロ大久保彦仮称(OH)    テングタケ属の1種(未同定種)

 

    
       ヤマブキフウセンタケ             カワムラフウセンタケ

(小山明人氏 撮影)


保 存 種

(国立科学博物館に標本保存された採集種から)

     
     Stephanospora sp.(谷口雅人氏撮影)      ケブクロツチガキ(谷口雅仁氏 撮影)

 

    
  ヤマトノリミアナタケ(Wrightoporia_japonica)      フウセンタケ属の1種 
      (井本敏和氏撮影)               (波部健氏 撮影)

(3日目)                      

   閉 会 式 

  
           閉会の辞を述べる大舘一夫氏(TY

当別企画セミナー「今、きのこの放射性セシウムは」

  
  放射能汚染の問題を提起し、セミナーを進行する保坂健太郎氏(TY

*映像撮影者について

本稿作成にあたり、本フォーレの共催団体である菌類懇話会の種山裕一様、種山美香様、小山明人様、谷口雅仁様、井本敏和様、幼菌の会の波部健様、神奈川きのこの会平野達也様より、特別の御計らいを戴き、貴重な写真を提供して戴きました。ご厚情に深く感謝申し上げます。本来ならば、逐一お名前を記載すべき処、紙面の都合により、多数ご提供戴いた種山裕一様、種山美香様、平野達也様においては、初出以降は、()内に、それぞれ、(TY)、(TM)、(HT)と記載させて戴きました。ご無礼の段、何卒、お許しください。

その他の映像は、大舘一夫、長谷川明(HAと表示)両会員がB地区を、大久保彦会員(OHと表示)がC地区と同定会の一部を、吉田考造会員(無印)がⅮ1地区を、及び西田誠之(無印)が、その他全般を撮影しました。 (以上報告 西田 誠之 記)


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