■美の山公園観察会

 ◎ 開催年月日 2016年7月17日(日) 

 ◎ 集合 美の山公園 山頂直下の駐車場

 ◎ 観察地 美の山公園

 ◎ 開催時間9:30~15:30

 ◎ 参加者 23名(内1日会員2名)

 ◎ 世話人 大舘一夫 近藤芳明 栗原晴夫 大舘くみ

 ◎ 鑑定人 福島隆一 大舘一夫 西田誠之 大久保彦 藤野英雄 富田稔 近藤芳明

 ◎ 報告  栗原晴夫

     
          

       
  2時間のきのこ探しの結果 撮影;富田稔      採取種整理   撮影;栗原晴夫       西田氏解説  撮影;栗原晴夫

         
    美の山公園キノコ講座  撮影;富田稔     福島会長解説   撮影;栗原晴夫

    




美の山観察会報告    2016年07月17日

美の山での観察会は今年で20回目となる。ここは秩父盆地の東に位置する。今年3月に“古秩父湾および化石群”が国の天然記念物に指定された。今の日本列島が形成されつつあるころのことで、約1700万年前秩父盆地を含め関東平野のほとんどは海であった。山側からの砂礫が堆積しながらも海中や水辺には多くの生物が繁栄したらしい。海水面は進退を繰り返しながら1500万年前頃にかけて美の山のある東側の外秩父山地が隆起し古秩父湾を塞ぎそこに堆積し続けた土砂が今の秩父盆地を形成していったという。麓の長瀞は盆地を流れる荒川の出口で、その流れが隆起した山を削り、山を形成している変成岩が露出している。岩畳などの景観を見せ、古くから地質の研究や観光で賑わっている。名勝・天然記念物に大正13年に指定されて、日本の地質学発祥の地ともされている。若き宮沢賢治も訪れていて(大正5年)、“つくづくと「いきなもやうの博多帯」荒川岸の片岩のいろ”、と歌った歌碑が我々の会も勉強会や標本保存などでお世話になっている県立自然の博物館のそばにある。詳しくは指定を機に博物館が発行した冊子があります。
 美の山観察会はここ数年7月の最後の日曜日に実施するのが通例となっていたが今年は少し早めて17日になった。毎回、梅雨明け後の猛暑の中での観察会となり参加者も減少していたので、良いことだと思っていた。当日は関東地方はまだ梅雨明けせず、多少の蒸し暑さはあったものの活動を阻むほどではなかった。

 観察会は福島会長、大舘世話人代表の挨拶の後地元会員の山口氏から美の山の近況について「秩父地方はここ二ヶ月まとまった雨はなく二三日前に短時間の大雨があったが山は乾いている状態で、今日ここへ来る前に様子を見てきたが山の斜面にはあまり発生はなく、谷筋の湿り気のあるような所の方が出ているようだ。」との報告をしてくれた。観察に向かう前に大舘世話人代表と供に公園管理事務所に行き、毎度の謝意と今日の予定を伝え会報を一冊差し上げた。
 私は昨年一緒に採集に廻った仲間とともに昨年と同じ中腹の斜面を見てみることにした。山口氏の話の通りで、出ていてよさそうなイグチ科、テングタケ科、ベニタケ科などの目に入りやすいキノコは非常に少なく、普段は見過ごす?(見て見ぬふりをする)ような、小さなヤマジノカレバタケやアシグロホウライタケなどを採取した。3カ月も前に立てたこちらの予定には天候もキノコもそうは都合を合わせてはくれない。
 個体数は少なかったものの諦めの早い私と違って、熱心な会員達はやはりいろいろなきのこを採取してきて、同定会のテーブルには隙間なく並べられた。
 鑑定会では西田氏がハラタケ目、イグチ目の他傘のあるタイプのキノをコ一つ一つ取り上げながら解説してくれた。その中で「ベニヒダタケはいつも名前が出てこない、傘は黄色くて襞を見ても赤味はあるがそれほどでもなく、ちょっと名前の付け方が強引過ぎると思っている。」また「コガネヤマドリに似ているキアシヤマドリタケは石川きのこ図鑑の池田氏がつけた名前で、他にキアミアシヤマドリ、アミアシコガネヤマドリなど別の人がそれぞれ名前をつけている。」とのことで、きのこの名前を憶えるのは至難である。
 続いて福島会長は硬質菌類について解説された。「ホウネンタケについてはほとんどコナラから出ているのしか見たことがない、エゴノキタケも同様にエゴノキからしか出ない。探せば他の木からも出ていたり、培養試験すれば発生もするだろうけど、自然界でこのように特定の樹種を選ぶのには、何か意味があるのだろう。マンネンタケについてはいろんな種あり、中国の図鑑には100種類くらい載っている。」
 最後に近藤氏が子嚢菌について解説され、「オサムシタケは美の山ではよく見つかり、その有性世代であるオサムシタンポタケは先に金平糖のような形のものがついていて、少ないがここでも見つかることがあるので皆さんも探してみて下さい。ニセキンカクアカビョウタケは比較的標高の低い場所でみられる。ビョウタケやモエギビョウタケはここよりもっと高い所でなければ見られない。」
 それぞれ解説の一部しか紹介できません、紙面の都合と書きたいのですが、私の記憶力と知識によるものです。ありがとうございました。
 事故もトラブルもなく3時過ぎに観察会は無事終了し、片付けの後、場所を変え役員会を行いました。また西田氏と大久保氏が標本保存の依頼に自然の博物館へ向かいました。持ち込み種はミミブサタケ(採集者:藤野英雄)、クリロイグチモドキ(採集者:会員)、シワチャヤマイグチ(採集者:村田紀彦)
 今回同定された種は、担子菌がハラタケ目30種、イグチ目13種、ベニタケ目13種、タマチョレイタケ目12種、他5目7種で、子嚢菌は3目5種、合計80種でした。

  確認種
   
シロタマゴテングタケとアケボノドクツルタケ 撮影;富田稔  ハイカグラテングタケ 撮影;富田稔   ヤマジノカレバタケ   撮影;栗原晴夫 
  
 
 
  ビロードツエタケ   撮影;栗原晴夫   ミヤマザラミノヒトヨタケ  撮影;栗原晴夫  ヒイロウラベニイロガワリ  撮影;大久保彦
   
  
 コガネヤマドリ  撮影;西田誠之    ウラグロニガイグチ  撮影;大久保彦    アケボノアワタケ  撮影;西田誠之
   
  シワチャヤマイグチ  撮影;富田稔  コビチャニガイグチ 撮影;富田稔  モミジウロコタケ   撮影;西田誠之
   
 
  サンゴホウキタケ  撮影;富田稔  ヒナアンズタケ  撮影;大久保彦   ミミブサタケ  撮影;西田誠之 


美の山観察会確認種  2016,7,17
目 : 科名 属 名 種 名
担子菌門
ハラタケ目
ハラタケ科 キヌカラカサタケ キツネノハナガサ
テングタケ科 テングタケ シロタマゴテングタケ
〃   〃 シロテングタケ
〃   〃 タマゴタケ
〃   〃 コテングタケモドキ
〃   〃 アケボノドクツルタケ
〃   〃 ハイカグラテングタケ
〃   〃 アカハテングタケ
〃   〃 カバイロツルタケ
〃   〃 ツルタケ
オキナタケ科 オキナタケ クロシワオキナタケ
〃  コガサタケ キコガサタケ
イッポンシメジ科 イッポンシメジ キイボカサタケ
ヒドナンギウム科 キツネタケ カレバキツネタケ
ヌメリガサ科 アカヤマタケ トガリツキミタケ
アセタケ科 アセタケ コバヤシアセタケ
〃  キヌハダトマヤタケ
ホウライタケ科 ホウライタケ アミガサホウライタケ
ツキヨタケ科 テトラピルゴス アシグロホウライタケ
〃  モリノカレバタケ ワサビカレバタケ
〃   〃 ヤマジノカレバタケ(旧オチバツエタケ)
〃  アカアザタケ アカアザタケ
タマバリタケ科 ツエタケ ツエタケ(広義)
〃  ビロードツエタケ ビロードツエタケ
〃  ダイダイガサ ダイダイガサ
ウラベニガサ科 ウラベニガサ ウラベニガサ
〃  ベニヒダタケ
ナヨタケ科 ヒメヒトヨヤケ ミヤマザラミノヒトヨタケ
キシメジ科 カブラマツタケ カブラマツタケ
所属未確定 所属未確定 コツブチャツムタケ
イグチ目
イグチ科 キクバナイグチ ミヤマベニイグチ
〃  ヤマドリタケ ヒイロウラベニイロガワリ
〃   〃 コガネヤマドリ
〃   〃 クロアザアワタケ
〃  ウラグロニガイグチ ウラグロニガイグチ
〃  アケボノアワタケ アケボノアワタケ
〃  ヘミレクシヌム シワチャヤマイグチ
〃  ニガイグチ フモトニガイグチ
〃   〃 ミドリニガイグチ
〃   〃 ヌメリニガイグチ
〃   〃 コビチャニガイグチ
〃  キッコウアワタケ キッコウアワタケ
クリイロイグチ科 クリイロイグチ クリイロイグチモドキ
ベニタケ目
ニンギョウタケモドキ科 ニンギョウタケモドキ コウモリタケ
ベニタケ科 ベニタケ イロガワリシロハツ
〃   〃 クサハツ
〃   〃 クロハツ
〃   〃 ヤブレベニタケ
〃   〃 カワリハツ
〃   〃 ウコンハツ
〃   〃 ウコンクサハツ(キナコハツ)
〃   〃 Russula heterophylla
〃  カラハツタケ ヒロハウスズミチチタケ
〃   〃 アイバカラハツモドキ
ウロコタケ科 キウロコタケ チャウロコタケ
〃   〃 モミジウロコタケ
ラッパタケ目
ラッパタケ科 ホウキタケ サンゴホウキタケ
キクラゲ目
キクラゲ科 キクラゲ キクラゲ
〃   〃 アラゲキクラゲ
アンズタケ目
アンズタケ科 アンズタケ アンズタケ
 〃 ヒナアンズタケ
タマチョレイタケ目
タマチョレイタケ科 タマチョレイタケ キアシグロタケ
〃  ファボルス ズジウチワタケモドキ
〃  マンネンタケ マンネンタケ
〃  クロブドウタケ ホウネンタケ
〃  オシロイタケ オシロイタケ
〃   〃 アケボノオシロイタケ
〃  ミダレアミタケ ミダレアミタケ
〃  シロアミタケ カワラタケ
〃   〃 オオチリメンタケ
シワタケ科 ニクウチワタケ ニクウチワタケ
ツガサルノコシカケ科 ホウロクタケ ホウロクタケ
マクカワタケ科 ニカワオシロイタケ シックイタケ
アカキクラゲ目
アカキクラゲ科 ニカワホウキタケ ツノフノリタケ
シロキクラゲ目
シロキクラゲ科 シロキクラゲ ハナビラニカワタケ
子嚢菌門
チャワンタケ目
ベニチャワンタケ科 シロキツネノサカズキ シロキツネノサカズキ(モドキ)
〃  ミミブサタケ ミミブサタケ
ビョウタケ目
ルトストロエミア科 ディケファロスポラ ニセキンカクアカビョウタケ
ニクザキン目
オフィオコルディセプス科 ティラクリディオプシス オサムシタケ
ノムシタケ科 イサリア コナサナギタケ
合計 80種


                            もどる