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それぞれの土地には、きのこ狩りの名人が住んでいて、広い範囲の「しろ」を持っている。「しろ」は息子にも教えない秘事で、その人が死ぬと永久にわからなくなってしまう。
かつて、秩父では至る所にマツタケが生えていたものである。今は山の手入れも悪くなり、「しろ」も教えてもらえなかったから、例えば興安寺の裏山にあったという程度で中々にマツタケにはお目にかかれない。
土地の名人は、美味のきのこは、その「しろ」を知っているが、知っているきのこの種類となると20〜30種位であって、そのほとんどが地方名で、聞いてもなかなかわからない。私は、地方のきのこ名人をたずね、現物をもとにして地方名を聞いている。それを以下に紹介し、併せて他地方の各位からも、地方名を教えていただき、収録して行きたいと思っている。各位のご協力を切望する。
- サクラシメジ
- サクラ或いはジュンレイ。ジュンレイはお遍路の人で、長く列をなして生えている所からきている。量がとれることと味もよく大関格。
- ホンシメジ
- ゴホンという。ゴホンは5本の株状に発生するからで、必ず5本でるものと考えている
- シャカシメジ
- センボンという。株状の形態からいわれる。今は、ホンシメジやシャカシメジは殆ど見られないが、味の王様として珍重されている。
- ナラタケ、マツタケ、クリタケ、マツオウジ
- そのままの名で地方名を聞かない。
- バカマツタケ
- サマツという。
- ヒラタケ
- 大正10年前後、樫の木に栽培されて売りだされた。
- シイタケ
- 昭和8年ごろよりクリ、ナラ、クヌギに栽培、クリのほだ木の良いものを種菌にしたものである。
- エノキダケ、クヌギタケ、ナメコ
- 地方名を聞かない。
- ツクリタケ
- セイヨウマツタケ、マグソタケ。マグソッタケは床に馬糞とワラを使う所から言ったもの。
- ササクレヒトヨタケ、ムササビタケ、ムジナタケなど
- 一括してマグソッタケと言う。
- ムラサキシメジ、フウセンタケ
- 一括してムラサキシメジと言うが、味の悪い仲間。
- ウラベニホテイシメジ
- イッポン或いはイッポンシメジと言う。量がとれることと味も良いので横綱格。
- イッポンシメジ
- ニセイッポン、ニタリと言う。
- クサウラベニタケ
- ニタリと言う。これは、ウラベニホテイシメジに似ているからである。
- チチタケ、ハツタケ、アカモミタケ、マイタケ
- そのままで地方名を聞かない。
- カノシタ
- ヌノビキと言う。きのこ飯の王者で風味が良いといわれる。
- コウタケ
- シシタケ或いはオジシと言う。
- シシタケ
- メジシと言う。
- ホウキタケ
- 一括してホウキタケ、ネズミタケと言う。黄色いものは食べるな。枝先の細かいものは食べるなと言われている。
- ムレオオフウセンタケ
- ダイコク、ダイコクシメジ、クロダイコクと言う。上味の下だがきのこの風格がよく、個体も大きいので珍重される。このきのこは冷蔵するとすっぱくなる。
- フジイロタケ
- シバッカブリと言い、生えている様子から名付けられたものである。
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