テーマ
@ 2009年の気象ときのこ -------------------- 富田 稔
富田氏
A ヤンマタケとカザフスタンのきのこ-------------- 椙田 道行
椙田氏のオニヤンマタケ
B アセタケ属のキノコ+少々-------------------- 大館 一夫
大館氏
C 埼玉県菌類絶滅危惧種とその他のキノコ-------- 大久保 彦
大久保氏
D ヒラタケ栽培-------------------------------- 藤野 英雄
藤野氏手作りのひらたけたまり漬け
E 変形菌の棲む環境-------------------------- 神 ナロウド
神氏
F 深山のきのこー高原のきのこ------------------ 西田 誠之
西田氏
G 菌類の栽培について------------------------- 福島 隆一
ハナビラタケを手にした福島氏 試験管の中の菌糸
2009年度プロジェクターによる発表・勉強会についての感想
今年も福島会長の『写真を持ち寄ってみんなで勉強できれば』との言葉で始まった今年の勉強会。トップバッターは富田さんの『2009年の気象ときのこ』。埼玉県の鐘撞堂山におけるきのこの定点観察結果と観察日前40日間の気象データを示しながら、気温・降水量・日照時間などときのこの発生種類数の関係について考察されました。山で出会ったきのこ採りの人たちがみんな口をそろえたように、『今年は秋口に雨が少なかったからきのこの出が悪い』というようなことを言われていましたが、9月の雨が少なく気温も低めであったことなどが気象データに現れており、観察されたきのこの発生種類数も秋以降減少していました。『そもそも気象と菌類の発生に関係があるのか?』という根源的な問題提起もなされましたが、きのこ採りの方々の経験的には『関係あり』のようなので、今後もきのこと気象の関係を追いかけていただきたいと思いました。
椙田さんから埼玉県内で採取されたヤンマタケやカザフスタンで観察されたエリンギの近縁種に関する紹介がありました。エリンギなるきのこは店で売っているものしか知りませんでしたが、この近縁種は草原で観察されたとのことでした。
続いて大館副会長の『アセタケ属のキノコ+少々』。今年はきのこが少なかったので、こういう年には普段はあまり目がいかないきのこが気になり、今回はアセタケ属のきのこに注目してみたということで、アセタケ属10種を紹介いただきました。きのこの写真に加えて、シスチジアや胞子の顕微鏡写真も合わせて見せていただき、属によって異なるそれらの特徴も説明していただきました。今まで顕微鏡での観察が重要という話は何度も伺っていましたが、今回初めて実感できたような気がします。しかし、アセタケ属は顕微鏡でのぞいても同定できないきのこの方が多いということでしたので、やはりこの仲間は私にとって敷居の高い存在であることに変わりはありません。
食事をはさんで大久保さんから『埼玉県菌類絶滅危惧種とその他のキノコ』についてきのこの写真を示しながらお話がありました。中には、なぜ?と思うような種も絶滅危惧種に指定されているとのことで、発表後は「だれがどうやって絶滅危惧種を選定するのか」で議論が盛り上がりました。
藤野さんからは『ヒラタケ栽培』についての発表。自宅の敷地に持ち込まれたニワウルシ(シンジュ)の大木のひとかかえもあるような巨大な“ホダ木”で栽培されたヒラタケについて、そのたまり漬けの試食も交えながら紹介していただきました。栽培自体よりも砂糖にこだわって黒砂糖を用いたというたまり漬けの方が気になったのは私だけではなかったようです。ごちそうさまでした。
神さんの『変形菌の棲む環境』。「菌類が森を育むという視点を自然回復運動に活かす」「菌類をたよりに生物多様性を判断する」という表現が印象に残りましたが、まったくの素人の私には少々難しすぎたようです。
西田さんの『深山のきのこ−高原のきのこ』。最初にわかりやすいところからということで“まいたけ採り”の記録を紹介いただきました。道の無い山奥ということで私には手の届かない世界なのかもしれませんが、もうすこし楽そうなところへ一度連れて行ってください。その後、日光や乗鞍周辺などのきのこを非常にたくさんの写真を使って紹介いただきました。「きのこは数を見ることが大切だ」という話は良く聞きますが、どれだけ観察すればよいのか少し気が遠くなりました。
最後は福島会長から『菌類の栽培について』。培地・培養に関する工夫について試験管の中の世界とハナビラタケの商用栽培での実例を挙げて紹介いただきました。特に会長が苦労されたハナビラタケの培地の工夫と、その後にまったく別ルートで挑戦された方の工夫と方向性が同じであったというお話は大変興味深く感じました。また、試験管の中に広がる菌糸は、知らずに見たらカビにしか見えないのですが、それぞれの繁殖の仕方に特徴があるというお話しを聞き、またそれが子実体まで形成してしまう様を見ると、まさに「生き物を育てておられるんだなぁ」と実感できるものでした。
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