きのこ講演会
開催日: 2010年2月13日(土)
開催場所: 上尾市コミュニティーセンター
講演:農学博士 吹春 俊光氏
参加者: 25名、会員外2名
担当: 事務局、西田 誠之、上原 貞美 
報告: 宮井 正彦

写真撮影:河野 茂樹
 
a 吹春氏の自己紹介(氏の出身校の会報より)

1959年3月;福岡県八女郡立花町に生まれる.
1977年;高校卒業(25回生),1年間補習科へ通う.
1978年;京都大学農学部農林生物学科入学
1982年;同上,大学院修士課程進学.
1984年;同上,大学院博士課程進学.
(大学在籍9年)
1987年;千葉県立中央博物館準備室へはいる(千葉県教育庁の職員)
1989年:千葉県立中央博物館開館,現在に至る.
(今の職業について今年の3月で丸11年)
大学では菌類生態学を専攻.いわゆるきのことよばれる仲間の生態と分類が専門で,今は大学のときに勉強しそこなったきのこの形態分類の勉強をしているところです.

(千葉県立中央博物館勤務・京都大学総合人間学部非常勤講師)

吹春氏の埼玉きのこ研究会での講演は、今回で二回目である。寒い日にも拘わらず、27名の参加のもと開催された。最近話題の同氏の著書『きのこの下には死体が眠る!?』の中から、特に「アンモニア菌のこと」をテーマに絞って講演して戴いた。

 アンモニア菌の発見と定義づけは日本人の手によるものである。アンモニア菌の生態は実に不思議で興味深いものがある。講演会の内容の一部を紹介し、報告としたい。

・アンモニア菌とは…アンモニア菌はアンモニアを好む菌を指すものではない。
 動物関連
の死体や糞尿がバクテリア等で分解する過程に発生するアンモニアは、菌類にとって猛毒。むしろ、アンモニアは多くの菌を殺滅してクリーンな攪乱間隙をつくる。ところが、アンモニア菌(対アンモニア抗体・解毒システムは未だ未解明)は、アンモニアに攪乱された空間にいち早く侵入する一群で担子菌類を中心に子嚢菌等含め約52種類が知られている。多くは、日本の報告が多い。近年、北米、ニュージーランド等海外からの情報も増えつつある。雰囲気が似る糞生菌とアンモニア菌は異なるので注意。

アンモンア菌は侵入し、しばらくコロナイズされるが、やがて、3年程で他の通常菌に遷移していく。まるで、植物の世界での遷移における攪乱時の陽樹のようなものである。

 アンモニア菌の生活様式には、2タイプがある。

腐生性(イバリシメジ、コツブザラエノヒトヨタケ、ヒシノミシバフタケ等)

  外生菌根性(アシナガヌメリ、アカヒダワカフサタケ、アカヒダワカフサタケモドキ、ナガエノスギタケ、ナガエノスギタケダマシ、オオキツネタケ等)

その他の話題

アンモニア菌の発見の経緯。

ナガエノスギタケと土竜の雪隠。

アンモニア菌の生物地理的分布の謎。

DNA鑑定を導入した分類と種分化現象。等々。

 エピソード、調査体験、最新学術情報を踏まえた話は実に興味津々で、皆さんは熱心に聴講されていた。

 吹春氏の著書は、これらの事柄に詳しく触れている。一読されるのをお薦めする。

  以上


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