■秋ヶ瀬公園きのこ観察会
    


    開催日:2015年1103日(火・祝日)

    観察地域:秋ヶ瀬公園三ツ池駐車場付近

    参加者:65名 (会員29名、1日会員36名)

    世話人:大館一夫、葛西俊明、野沢潔、福島隆一

    写真撮影協力者:門倉めぐみ

     報告:野沢潔、福島隆一

       
   鑑定会    撮影  大館一夫         楽しいきのこ汁  撮影 門倉めぐみ

         
    キノコ汁     撮影 大館一夫        きのこ汁の試食   撮影 富田稔



 

  前日の井戸端会議での話題は、「きのこの旨さ」に収束していった。その後旨いキノコの条件として、姿
  かたちの良いものという事に成り、その場の大半の人がシメジの幼菌のような、シンメトリーでふっくら
  としたものを連想して居た。
(舞茸や箒茸等も有るのだが・・・)。そこでシンメトリーでないきのこの
  代表として、アカイカタケを拡げて見せた所「こんな規格外も有るんだなー。イカは好きだが、これは
  とても食べられない。」という1幕が有って宴は閉じた。そのイカの話題が入って来た。国際頭足類函館
  シンポジュウムが
11月に開催された。そのロゴマークとしてイカをデザインしたものが用意された。当初、
  日本の一般的なイカの姿として、三角頭巾を上に、足を下にした姿であったが流石に専門家の集まりで
  あるだけに「逆では」との忠告が重なり、三角頭巾を下にして作り直したとの事である。イカタケやアカ
  イカタケの写真では、足が上に写されているのだが・・・

   さて観察会は、23日寒い日が続き、当日は午前3時ごろまで降雨が有ったので最悪の条件に成る事を覚悟
  して床に付いた。翌朝は晴れて暖かかった。しかしながら地面はぬかるんでいるだろうと会場に向かった。
  幸いにも、いつもとは道路を挟んだ反対側のグランドにシートを敷ける場所を確保する事が出来た。当日の
  採集品は懸念通り、軟らかいキノコが少なく硬いキノコばかり目に付いたが、栽培したような美しいヒラタケ
  がひと際目立っていた。域外の採集品も展示された。

   きのこ汁は、下拵えはしてあったが久しぶりの現地調理であり、投入したキノコの量も半端ではなかった。
  会長が下拵えしたキノコの種類は、シイタケ、マイタケ、ハナビラタケ、ブナシメジ、エリンギ、エノキタケ、
  アラゲキクラゲ、等であり、タマネギ、ナス、ゴボウ、ニンジン等も入っていた。会長の知り合いのきのこ
  業者から戴いて来たシイタケとマイタケは入りきらなかったので、二度目のきのこ汁を作る時に入れた。
  また村田さんが栽培したムキタケやヌメリスギタケもたくさん入れ、橋本さんが持参したシイタケ(原木栽培)
  ヒラタケ、シロヒラタケ(短木栽培)等もたくさん入れたので、きのこの佃煮状になってしまった。1日会員
  が多かったので何杯もお替りする人で大盛況であった。美味しいという声を聞くと我々俄か調理人としても、
  やりがいを感じる。今回、鍋の底にアサリやベビーホタテが無かったので会長に聞いてみた所、汁の中に長い
  事入れておくと、特有な生臭さが出てくるので入れなかったという事でした。

    さてここで気が付いた方も有ると思うが、世話人欄に塩津名誉会長の名前が落ちている。ご本人の要望で
  今回より外した。いろいろ話を聞いてみると、86歳になられ、息子から運転免許証を取り上げられてしまい、
  山の畑で栽培して居た所にも行けなくなり、今日も自宅から自転車で来るなど行動半径が小さくなってしまった
  こと等を寂しそうに話していた。話の中でとても面白かったのは、菌類の多様性の事であった。細菌類は地球
  の歴史が始まって間もなく現れた生き物であり、長い過酷な条件下で生き抜くための様々な適応が有り、一番
  多様性に富んでいる。次に放線菌類をはじめとするカビの多様性について話されていた。多様性という意味は、
  過酷な環境下で生き抜くための物質を作り出す遺伝子が組み込まれていると解釈するとよく理解できる。
  子嚢菌は別としても、担子菌類は、多くの場合、樹木の進化と共に発展してきた生き物なので(?)前者の
  ような多様性はないと思われるが、菌類の長い遺伝子進化を受け継いでいるので、われわれとは比べ物になら
  ない多様性に富む生き物ではないかというような難しいお話をなされていた。いつまでもお元気であることを
  祈念して・・・
                                 文責:野 澤 潔


    
    ヒラタケ  撮影 富田稔           エノキタケ  撮影 富田稔          ナラタケ  撮影 富田稔

    
   スエヒロタケ  撮影 富田稔        ヌメリスギタケ  撮影 富田稔      ヤナギマツタケ  撮影 富田稔

    
    ミドリスギタケ  撮影 富田稔      チチアワタケ  撮影 門倉めぐみ    ハチノスタケ  撮影 富田稔

 
    マンネンタケ 撮影 富田稔 
    

 確認種

ハラタケ目

ヒラタケ科

ヒラタケ

タマバリタケ科

エノキタケ、キヒダナラタケ(仮名)

スエヒロタケ科

スエヒロタケ

ハラタケ科

オニフスベ、ノウタケ、コチャダイゴケ

ウラベニガサ科

ベニヒダタケ

シジミタケ科

クロゲシジミタケ

モエギタケ科

ヌメリスギタケ、ヌメリスギタケモドキ?

ヤナギマツタケ

アセタケ科

キヌハダトマヤタケ、オオカブラアセタケ

イッポンシメジ科

シロイッポンシメジ(青木)

所属科未確定

ミドリスギタケ

イグチ目

ヌメリイグチ科

チチアワタケ

ベニタケ目

マツカサタケ科

イタチナミハタケ

スッポンタケ目

スッポンタケ科

スッポンタケ

キクラゲ目

キクラゲ科

アラゲキクラゲ

ヒメキクラゲ科

ヒメキクラゲ、タマキクラゲ

タマチョレイタケ目

タマチョレイタケ科

カワラタケ、アラゲカワラタケ、ヒイロタケ、ツヤウチワタケ、カイガラタケ、クジラタケ、ベッコウタケ、ウズラタケ、チャカイガラタケ、チリメンタケ、エゴノキタケ、チャミダレアミタケ、センベイタケ

ハチノスタケ、ミノタケ近縁種、マンネンタケ、オオミノコフキタケ、*ヒメシロアミタケ、ウスバタケ

シワタケ科

エビウラタケ、ヤケイロタケ、ヒメモグサタケ

ウロコタケ科

カミウロコタケ

ツガサルノコシカケ科

*ホウロクタケ

所属科未確定

ブドウタケ、ニクウスバタケ、ミダレアミタケ、

タバコウロコタケ目

 

タバコウロコタケ科

ネンドタケ、タバコウロコタケ属不明種

所属科未確定

ウスバシハイタケ、

 *印は、褐色腐朽菌

   自生するヤナギマツタケを大量に見たのは、平成48月に学校農業クラブ連盟・関東大会の会場が静岡県
   三島市民文化会館で開催された時でした。楽寿園・園内のイロハモミジの立ち木の枝を切った先端に沢山発生
   しておりました。次にエノキの立ち木に見られました。それまで埼玉県を中心とした地域では、ヤナギマツ
   タケの自生を見かけるのは稀なことでした。平成
15年から4年間京都周辺のきのこを見てきましたが、街路樹
   のトウカエデやプラタナスに沢山生えていました。ヤナギで見たのは宇治川の土手で一度だけでした。今回、
   晩秋のヤナギに生えていたヤナギマツタケを見て、あらためてヤナギマツタケの命名の意味を考えさせられま
   した。

     同様に、ヌメリスギタケモドキですが、三渓カラー名鑑235頁に記載されている学名は、Pholiota cerifera
   なっております。以前は
P.aurivellaと記載されておりました。今回、観察会で見られた種は、P. ceriferaであると
   すると山の渓流沿いで沢山見られる大型のヌメリスギタケ型のきのこは別の種に成るのだろうか?村田さんの
   感想では、これはヌメリスギタケなのだろうか?と首を傾げていましたが、ヌメリスギタケモドキに
2種類ある
   と考えれば納得が出来ます。

     今回、ヒダの色が黄色く、柄に垂生するキヒダナラタケ(仮名)が見られました。平地でも、山間部でも
   時々観察されますが、覚え易いナラタケの種類です。今まで沢山のナラタケ属の菌種を培養して来ましたが、
   根状菌糸束が沢山見られる種が
4種類有りました。Armillaria mellea(ナラタケ) A.gallica(ヤワナラタケ)
  (ワタゲナラタケ)
A.nabsnona(ヤチナラタケ)A.sp(キヒダナラタケ)これらの種とオニノヤガラの仲間とは
   密接な関連が有ると思っています。何故なら、オニノヤガラの仲間は、根状菌糸束を誘き寄せ餌にしている
   からです。実際、前
3種については、たくさんのオニノヤガラの自生を確認して居ますし、学会報告も有ります。
   白天麻に付いているナラタケ属菌がキヒダナラタケであると面白いのですが、試験してみる価値が有ると思い
   ます。

     鑑定会でシハイタケではないかというきのこがありましたが、傘表面の毛が荒々しく、管孔部が長い歯牙状帯紫色
   であったので思わずシラゲタケかと思いましたが、自宅に帰り考えたり、調べたりしながらウスバシハイタケ
   であろうと落ち着きました。

     松等の朽木にブドウタケという暗紫色の硬いキノコが見られますが、薄い培養菌糸が培地深部に伸びる性質
   があり、変わり者であるという印象が有ります。熱帯地方では広葉樹の腐朽菌であるというのも変わって居ます。
     私は、培養したキノコの菌糸を観察することを日課にして居るのですが、小川で採集したスギエダタケ
   観察して居るとバクテリア汚染により菌糸生長が抑えられ伸長が著しく阻害されている菌糸が、黄色い厚い
   菌糸塊を作り、子実体原基を作りそうな気配が見られるのは、不思議な出来事では有りません。見ていると
   色々想像を掻き立てられ、わくわくする事も有ります。そんな時は、何時もきのこという生き物という観念に
   襲われます。敵との遭遇、未知との遭遇。必死に生き残り作戦を行う姿を考えてしまうのです。分子レベルの
   物質のやり取りを見ることはできませんが、菌糸がどのような動きや変化をするかを観察する事により、想像
   を掻き立ててくれるのです。試験をしてみると、考えていたことが正解であるためしが有りませんが、そこ
   から次のステップが始まる事が常です。

     上原さんが、キノコ料理勉強会等で究極のきのこ汁という言葉を使いましたが、私も真似をして美味しい
   きのこ汁づくりを目指してきました。今年度日本菌学会埼玉フォーレが、ホテルヘリテージ(四季の里)
   を会場にして実施されました。全国からお集まり戴いた方に初日の夕食会に究極のきのこ汁を食べていただ
   こうと、きのこ汁の材料とレシュピを持参し、斎藤総料理長様と一時間ほどお話を致しました。斎藤様は、
   フレンチの世界で修行して来られたそうですが、どシロートの私の話をうなずきながら聞いてくれました。
   レシュピの説明や手順の話などをしたのですが、ダシは天然物から取る事、うす味に仕上げる事、野菜や
   キノコは、あまり煮込まず歯触りを大切にする事、ベビーホタテやアサリなど貝類はダシを取ったら取り
   出す事等の説明が有り、お任せしました。後で考えてみれば、釈迦に説法でした。食べてみると薄味でダシ
   もあっさりしており、キノコや野菜類は適当に歯触りが有り、美味しいきのこ汁でした。皆さん何度もお替り
   をしていた所を見ると美味しかったに違いありません。我々が作る濃厚な旨味が出ている訳では有りませんが、
   大衆受けする旨いきのこ汁です。修行を積んだプロの人達は、要求に応じて何種類も美味しいきのこ汁を作る
   事が出来ることを見せて戴きました。そのような訳で、今後私は、究極のきのこ汁という言葉を使う事は
   辞めました。
以後きのこ汁に致します。大反省です。
           文責:福 島 隆 一

                                                   

  

                        
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