■美の山公園観察会

 ◎ 開催年月日 2017年07月17日(月・祝日) 

 ◎ 集合 美の山公園 山頂直下の駐車場

 ◎ 観察地 美の山公園

 ◎ 開催時間9:30~14:30

 ◎ 参加者 27名(内1日会員1家族3名)

 ◎ 世話人 近藤芳明 富田稔 栗原晴夫 

 ◎ 鑑定人 福島隆一 西田誠之 大久保彦 藤野英雄 富田稔 近藤芳明 

 ◎ 報告  栗原晴夫

     
          

               
            福島会長の挨拶  撮影;西田誠之    世話人の説明    撮影;西田誠之    参加者の面々  撮影;西田誠之

                    
        一般参加のご家族  撮影;西田誠之   山頂広場での鑑定会  撮影;栗原晴夫     コガネヤマドリの説明  撮影;富田稔

    




観察会当日はまだ梅雨明けはしていなかった。九州北部では豪雨による甚大な被害があり、連日報道されていた、一変して関東は空梅雨状態で雨がほとんど降らず、きのこの発生は期待できないだろうという思いで美の山の会場へ向かった。埼玉県の真ん中を流れる荒川では20年ぶりの取水制限が始まり、この報告文を書き始めた時は制限が10%から20%になってしまった。私の住んでいる近くを流れる不老川(荒川の支流の支流)ではもう一か月くらい渇水し川底の石が露出している姿が続いている。この川は古多摩川の名残で砂礫でできた地層なので降雨の少ない冬場、旧暦の正月頃には水流は地下に潜ってしまっていた。年が明けると一つ歳をとるという数え年を使っていた時代に、この川は年を取らないということで“年とらず川”が変じて不老川になったと云われている。子供のころ早春に川底に降りて遊んでいた時仲間の一人が上流の方から「水が来たぞー」と大声をあげて走ってきて、しばらくすると滲んでくるように水流ができ始めてきた光景を一度だけ見たことがある。しかし40年以上前くらいから人口増化に伴う生活排水の増加などさまざまな開発により冬場に水が涸れることはなくなってしまっていた。ところが今では下水道の整備、護岸のコンクリート化、或いは気象のせいなのか10年位前からは夏場に枯れてしまうことが多くなってきた。
 話がすこしそれたが、こんな空梅雨で猛暑が予想される日でも現地に着くと多くの会員たちがすでに集まっていた。会は福島会長の挨拶に始まり、近藤世話人代表が諸注意、予定などを伝えた。また富田氏がここ数日の秩父地方の降水量を詳しく報告してくれた。
 採集は志村、清水両氏と3人で車で少し移動し中腹の斜面を歩いてみた。前夜に少しまとまった雨があったようで、地面は程よい湿り加減ではあるのだが、硬質菌類が少あるくらいで傘と柄のあるきのこの姿はいくら歩いても一向に見当たらない。しばらくして同行の清水氏がこの山ではよく出るヒイロウラベニイロガワリをやっと一本見つけた。その後1時間半ほど歩いてみたがベニタケ属と、ニガイグチの仲間を1個体ずつと、山姥の髪の毛と言われたりしている細い毛のようなものが付いた枯れ枝や硬質菌を採取し、鑑定会場に向かうことにした。
 昼食後鑑定会用のテーブルに西田氏が作製してくれた分類プレートを並べ、そこに会員たちが採取してきた標本を並べていった。やはりハラタケ目、ベニタケ目のプレートの前にはほとんどキノコは並ばず、いつもならベニタケやテングタケの仲間は同じ種が何個体も並ぶのだが、今回は僅かな種がそれぞれ一本ずつという感じであった。
 講評は福島会長が硬質菌類を主に解説され、ニクウチワタケは木から生えてくるものと地面から出るものとではちょっと感じが違う。ベッコウタケは日本産とヨーロッパ産は別種ではないかと言われていて、前者は木を枯らすが後者は枯らさない。桜やハリエンジュの木の根元に発生し心材を綿腐れさせるとのこと。また私が採取してきた細い毛のようなものはシロホウライタケの根状菌糸束だろうとのことで、ナラタケなどはもっと太い毛になりその菌糸束の役割について説明して下さった。続いて西田氏がイグチ類について解説し、ヒイロウラベニイロガワリは広葉樹林の標高の低い山で見られ、似ているバライロウラベニイロガワリは富士山など亜高山帯の針葉樹林に発生する。図鑑によく出ているアメリカウラベニイロガワリは日本にはないとのこと。最後に近藤氏が冬虫夏草にについて解説された。
 今回同定された種は35種で私が報告するようになったこの数年では最小の数であった。思ったほどの気温の上昇もなく観察会は無事終了しました。解散後場所を移し役員会を行い、8,9月の宿泊観察会について話し合ました。


  確認種
  
゙右-コガネヤマドリ左-近縁種  撮影;西田  ウラグロニガイグチ   撮影;大久保彦     ニクウスバタケ    撮影;富田稔 

  
   ネンドタケ   撮影;富田稔        シロキクラゲ  撮影;大久保彦     オサムシタケ 成虫より発生 撮影;大久保彦


    
オサムシタケ 幼虫より発生 撮影;大久保彦  カメムシタケ  撮影;富田稔   


美の山観察会確認種  2017,7,17
目 : 科名 属 名 種 名
担子菌門
ハラタケ目
ハラタケ科 ホコリタケ ホコリタケ
〃  ハラタケ ハラタケ属の1種
テングタケ科 テングタケ ガンタケ
ツキヨタケ科 モリノカレバタケ ヒロハアマタケ
キシメジ科 キシメジ ハダイロニガシメジ(青木仮称)
ヒラタケ科 ヒメムキタケ ヒメムキタケの仲間
科未確定 チャツムタケ チャツムタケ属の1種
イグチ目
イグチ科 キクバナイグチ ミヤマベニイグチ
〃  ヤマドリタケ ヒイロウラベニイロガワリ
〃   〃 コガネヤマドリ
〃   〃 キアシヤマドリタケ(池田仮称)
〃  ヤマイグチ ウラグロニガイグチ
〃  ニガイグチ チャニガイグチ
〃   〃 オクヤマニガイグチorオリーブニガイグチ
〃  キヒダタケ キヒダタケの仲間
ベニタケ目
ベニタケ科 ベニタケ ドヨウハツ(青木仮称)
ウロコタケ科 キウロコタケ チャウロコタケ
タマチョレイタケ目
タマチョレイタケ科 タマチョレイタケ スジウチワタケモドキ
〃   〃 アシグロタケの仲間
〃  マンネンタケ オオミノコフキタケ
〃  シュタケ ヒイロタケ
〃  クロブドウタケ ホウネンタケ
〃  ウスキアナタケ ベッコウタケ
〃  ツヤウチワタケ ツヤウチワタケ
ツガサルノコシカケ科 ホウロクタケ ホウロクタケ
〃  カンバタケ シロカイメンタケ
科未確定 ニカワオシロイタケ ニクウスバタケ
〃  ニクウチワタケ ニクウチワタケ
〃  オシロイタケ アケボノオシロイタケ
タバコウロコタケ目
タバコウロコタケ科 キコブタケ ネンドタケ
科未確定 シハイタケ ハカワラタケ
キクラゲ目
シロキクラゲ科 シロキクラゲ シロキクラゲ
子嚢菌門
ニクザキン目
オフィオコルディセプス科 ティラクリディオプシス オサムシタケ
オフィコルディセプス カメムシタケ
クロサイワイタケ目
クロサイワイタケ科 チャコブタケ チャコブタケ
合計 35種


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