今年もヌエック研修室にて、1年を振り返っての、きのこ観察結果の発表・勉強会が開催されました。
大舘副会長の開会の挨拶の後、午前中3名、午後2名の方が、多種多彩なきのこの撮影映像をプロジェク
タースクリーンに映写しながら発表されました。
また、最後には硬質菌の採集標本の展示があり、福島会長を中心に鑑定・検討作業を行いました。
発表者は6名でしたが、印象深い内容が多く、あらためて、きのこへの思いを深めた一日でした。
発表テーマ(発表者)と発表概要
①
冬虫夏草について(大久保 彦)
はじめに「冬虫夏草」の概要と近隣の冬虫夏草のお勧め観察地と観察適期の説明があり、続いて、
今年観察した以下の種が映像で紹介されました。
ツクツクボウシタケ、オサムシタケ、カメムシタケ、セミタケ、イトヒキミジンアリタケ、サナギ
タケ、ハナサナギタケ、ヤンマタケ、クモタケ、セミノハリセンボンタケ、ボーベリア―菌、ミヤマ
タンポタケ、ツブノセミタケ、タンポタケモドキ、
②
2017年の天候ときのこの発生状況(富田稔)
今年5月~11月の天候と気象データが3頁に渡って表示され、観察地岩舟のきのこの発生状況が説明
されました。
5月上旬~6月中旬迄は、平年より、降水量は平年より少なく、日照時間は1.2~1.4倍、平均気温は
0.9~2.3℃高かった。その為、7月以降、きのこにも以下のような現象が見られたとのこと。
*小型のコテングタケモドキと思われるきのこが見られた。
*枯死したり、成長が止まったボタンイボタケが数多く見られた。
*ツチグリが多く見られる時期が無かった。
*ヤマブキフウセンタケと思われる黄色のフウセンタケの発生時期が1ケ月遅れて、7月から8月に
ずれてしまった、等。
③白いきのこ(大舘一夫)
初めに、キノコの種について、別種と亜種・変種・品種、及び色違いのアルビノ種の説明があり、
続いて、これまで観察した以下のきのこ(別種とされている白色型を含む)についてはさらに紛ら
わしい白色型が見出されるので、その考察結果を映像に基づいて解説されました。
(発表種)
タマゴタケ(シロタマゴタケ)、ミヤマタマゴタケ、ツルタケ(シロツルタケ)、タマゴテングタケ
モドキ、ウラベニホテイシメジ、サケツバタケ(キサケツバタケ)
④今年度観察した気になるきのこ及びハナビラタケの基礎研究について(福島隆一)
今年7~8月の野外観察会(上州武尊山周辺及び車山高原)等で観察された希少種を始め、多くの
きのこが映像で紹介されました。また、ハナビラタケ栽培の基礎研究や、その現場、育成状況なども
紹介されました。
(主な発表種)
ヤケコゲタケ、アサネノムレオオイチョウタケ、カバノアナタケ、ツノシメジ、オオカボチャタケ、
ウツロベニハナイグチ、十和田湖周辺のハナイグチ、ナラタケの菌糸束他
⑤ヒラタケの異変について(栗原晴夫)
傘の裏面、ヒダに異変を生じたヒラタケの映像が紹介されました。今年観察したヒラタケのヒダには、
どれも粒粒の白瘤が多数着いていたとのこと。
(白瘤の正体は、キノコバエを介してヒラタケに侵入した線虫による虫瘤で、ヒラタケがその侵入に
抵抗して生じた傷痕です。この症状が、九州から西日本、さらに北上し続けて、10年ぐらい前から
関東以北にも多く見られるようになっています。初夏から発生するウスヒラタケにはさらに多く見
られます)
⑥今年、採集した硬質菌について(宮井正彦)
今年、採集したタマチョレイタケ目、タバコウロコタケ目、コウヤクタケ目、キカイガラタケ目等の
材上生の菌が多数展示されました。
(判明した種は、以下に掲載) (以上報告 西田誠之)
判明種一覧(採集者―宮井正彦、鑑定人―福島隆一)
(本稿報告 宮井正彦)
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