■ 川越周辺観察会
開催日 |
2017年6月18日(日) |
集合場所 |
川越水上公園 |
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観察地 |
川越周辺平地林(堀兼・上赤坂の森公園、下松原地区雑木林、智光山公園 |
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参加者 |
16名(会員14名、一日会員2名) |
世話人 |
大久保彦、藤野英雄、西田誠之 |
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鑑定人 |
大舘一夫、大久保彦、近藤芳明、富田稔、西田誠之 |
報告 |
西田誠之 |
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撮影 |
西田誠之、大久保彦、富田稔 、沼田尚文 |
観察開始の挨拶・集合された皆さん 川越市民の森予定地
爽やかな森・チップの歩道 丹念に探索(いずれも下松原地区)
鑑定中 堅いきのこが多かった
(実施日までの経緯) 今年も、年初の野外観察会として、川越周辺の平地林を探索する本観察会を実施することになった。当会、創設以来、毎年この梅雨の時期に実施しているが、いつも、懸念されるのが、雨が降った場合の同定場所のことである。採集して来た多くのきのこを置き並べて鑑定するためには、どうしても屋根のある場所が必要となる。その為、集合場所である川越公園に事前に依頼して、一般には開放されていない広いシェルターのある場所を特別に開放して戴くようお願いして来た。今年も同公園のご好意でその許可を戴いたのだが、ただ、6月の最終の土、日曜日だけは、業務で使用するので開放出来ないとのことだった。その為、役員で協議した結果、当観察会を、例年より1週早く実施することになった。これで今年も雨天時の対策はできたが、しかし、今度は、1週早い実施のゆえに、肝心のきのこの出方が、どうか、それが心配である。6年前の2011年にも、同時期に実施しているが、こうなった以上、空梅雨では困る、、むしろ、「雨よ降れ、降れ」と願っていた。しかし、雨は殆ど降らず、5月中旬から天地とも乾ききって、早くも列島を30℃超の「真夏日」が蔽う始末。関東も例外ではなく、早々に「猛暑の日々」となってしまった。地球規模の温暖化の影響は、確実に当地にも及んでいると言わざるを得ない。6月8日には「関東地方も梅雨入り」の報が出たが、しかし、相変わらず、願っているようには雨が降らない。ようやく、実施日の5日前にかなりの雨が降ったが、しかし、すぐにまた再び暑い日差しが戻り、地表はすっかり乾いてしまった。 大久保彦氏と直前に下見をしたが、やはり,菌影薄く、期待できるのは材上生のきのこぐらいだった。トキイロヒラタケや、ウラベニガサ、ベニヒダタケ等、中でもアミスギタケが大量に出ていた。しかし、菌根菌は、なかなか見出だせなかった。6年前の同時期の観察会では、115種ものきのこが記録されているのだから、参加の皆さんの「探索力」「たしかなきのこ目」に期待しよう、、と話あって、早々に、その日は切り上げた。 (実施日) 6月13日以後も、4日間、雨が降らないまま、この日を迎えた。 8時前に、集合場所の川越公園に着いて、すぐに公園事務所に挨拶に行った。 落ちついた曇り日で、爽やかな朝だった。しかし、「午後から雨もあり」との天気予報なので、「シェルターが必要か、どうか、微妙ですね、、」と係官が気遣いをして下さった。 駐車場は、既に驚くほど多くの車で溢れていた、バザーか何かの催しがあるらしい。駐車場が広大なのと我々の集合位置が離れているのが、幸いだった。すでに大久保さんや、緑川さん等が先着されており、程なく、本日の参加者全員が集合された。常連の皆さんばかりだが、事前に、急用等で参加できなくなった方もあり、いつもより少ない人数だった。藤野さんは、同定時に使用するシーツをここへ届けて後、すぐに診療に向かったとのこと。福島会長の到着を待って、しばらく歓談しながら過ごした後、大舘副会長に開始の挨拶をして戴き、世話役の大久保氏と私が簡単に、本日の手順等を説明した。その後、すぐに手分けして観察地に向かった。観察地は、恒例の2か所の他、智光山公園を加えて、3カ所に設定した。 (観察地にて) 私は、下松原地区へ行き、近藤さんや、宮井さん、篠崎さん、また現地で待っておられた稗島さんと一緒に歩いて観察した。森の中はしっとりとして爽やかだった。少ないと思っていたきのこが、丹念に探すと見つかるので、安堵した。地中に埋もれた腐朽木や落ち葉等を探ると菌糸がびっしり張り付いていた。すぐに、その腐朽木にハイイロイタチタケが生えているのを手にした。2000年に、高橋春樹さんが新種発表したきのこである。以前は、よく見つけたきのこだが、久しぶりに手に取った。こうしたきのこは、目立たないので、きのこが多い時は見過ごしているのだろう。 その後も、常連のイヌセンボンタケや、よく見かけるが名前の解らないシロホウライタケ属の1種と思う微小菌や、ヒロハアマタケかオオミノアマタケか、等と思われる菌が見られた。こうした繊細なきのこは、新聞紙等でくるんで、持ち帰る等と言うことは出来ない、結局、ハイイロイタチタケだけを、近藤さんの収納容器に入れて貰った。この時期、そういう用意をして来なかったのが愚かである。 その後、目に留まったり、手にとったりしたきのこは、材上生の、いわゆる「硬いきのこ」と呼んでいる頒布種が殆どだった。それらは揃って、至る所に生えていた。チャウロコタケ、アラゲカワラタケ、ミダレアミタケ、チャカイガラタケ、エゴノキタケ、クジラタケ、ホウロクタケ、ネンドタケ、ネンドタケモドキ、ヤケイロタケ、カワラタケ、ハカワラタケ、シハイタケ、ツヤウチワタケ、ツヤウチワタケモドキ、ヒイロタケ等々、この雑木林では、1年中見られる木材分解菌であるが、この時期には、固くなく柔らかい新鮮な姿が見られる。ヤケイロタケや、クジラタケの幼菌が、そんな状態で多く見られた。マツオウジも、あちこちに生えていた。少し歩いたところで、伐採木の切り株に、白い硬質菌が乱生!していて、目を引いた。オオチリメンタケだった。まだ新鮮な、大きな傘を幾つも連ねて生えていた。隣の切り株には、逆に、褐色の微細な管孔を有する小菌が、カチカチに硬くなって、沢山、半座生状態で群生していた。一列に縦に並んで生えている。キヌハダタケモドキではないかと思われたが、確信はない。 古い木柵や切り株には、ヒメシロアミタケや、ニクウスバ(古いもの)がこびりついていた。キクラゲ類も、シロ、タマ、アラゲ、ヒメ、と揃っていた。出始めのツノマタタケも見られた。ハナビラニカワタケもいたようだ。宮井さんが、まだ真っ白な、新鮮なサビハチノスタケを一つ拾いあげて、見せてくれた。 こうして、歩いて行ったが、菌根生のきのこは、さっぱり見つからなかった。篠崎さんが見せてくれた採集袋の中にガンタケがあったのが、救いだった。さらに遅れて来られた稗島さんが、「赤いベニタケを一つ見た」と言われたので、戻って、みんなで探してみた。たしかに、ベニタケが一つ草蔭に隠れて生えていた。ケショウハツだった。やっと一つか、、と溜息が出た。一様に「今年は、遅れているなあ、、」と実感した一時だった。 結局、この日我々のグループで見つけた菌根菌は、篠崎さんのガンタケとこれだけだった。いつも最初に出てくるヒビワレシロハツも見かけなかった。私が、2週間程前にここで見た、ヒロハシデチチタケも見あたらなかった。最後に、数日前大久保さんと一緒に見つけたトキイロヒラタケを、皆で見に行くことにした。しかし、広大なこの森のどこにあったか、記憶が曖昧で、あちこち迷ってしまった。稗島さんにガイドして貰って、ようやく、現場に辿りついた。幸い、まだ一叢残っていたが、しかし、トキイロもすっかり失せて、薄茶色に干からびた状態に様変わりしていた。これを見て、トキイロヒラタケとは、誰も思わないような有様だった。 その時はもう正午を回っていた。正味2時間半足らずの探索できのこの種数は乏しかったが、同行の皆さんの御蔭で、楽しい一時を過ごすことが出来た。 (同定会にて) 幸い落ち着いた曇り日のまま、観察を終え、同定会に臨んだ。いつもの駐車場傍の木陰の草地に、藤野さんが届けてくれたシーツを敷いて、採集種を並べた。 分類プレートはいつものように新基準で用意したが、ハラタケ目、ベニタケ目等はごく僅かしかなく、イグチ目等は皆無だった。子嚢菌はクロコブタケ、チャコブタケとその仲間だけで、冬虫夏草も採集されなかった。その為、全体の種数も乏しかったのは否めない。それでも、この日生えていた目につくきのこは、ほぼすべてが採集されていたのではないかと思われた。私達のグループが見たのと、同じく,材上生の種が多かったが、クロゲシジミタケ等、丁寧に探した結果得られたと思われる小菌もあり、また、そう度々は見られないアイカワタケも久しぶりに採集されていた。 全員で分類、命名した後、講評に入り、大舘副会長が個々のきのこを手に取って解説された。アイカワタケと同種と判明したヒラフスベについて、また、ヒトクチタケの生態や隠れている管孔のこと、ツエタケの仲間に共通する傘表面の特徴、ドクベニタケとドクベニダマシの味等を丁寧に説明された。続いて、私が、高知県在住の研究者、水田ゆかりさんが発表された「偽根を持つ日本産ツエタケ属の検索表」を紹介して、ツエタケの見方等を説明した。昔から食菌とされてきたが、なお未知種の存在の可能性もあり油断は出来ないと水田さんは警告されている。 最後に、大久保彦さんより、雨対策について提案があった。赤坂の森公園内の施設を同定場所として借りることが可能とのこと。来年以降の対応として検討に値すると言うことで、意見が一致した。 終了後、私一人になったが、公園管理事務所に御礼の挨拶に出向き、謝辞を述べて、会報を届けた。今年は、そのお世話にならずに済んだが、いつも雨天でも実施可能なように配慮して戴くので本当に有難いことである。 皆様の協力に感謝しつつ、帰路についたが、すぐに雨が降り始めた。帰宅した時には、本降りとなっていた。
担子菌門 ヒラタケ科 ヒラタケ属;トキイロヒラタケ スエヒロタケ科 スエヒロタケ属:スエヒロタケ、 ツキヨタケ科 モリノカレバタケ属:モリノカレバタケ、 シロホウライタケ属の1種? タマバリタケ科 ツエタケ属:ヒマラヤ(オオ)ツエタケ エノキタケ属:エノキタケ ラッシタケ科 クヌギタケ属:クヌギタケの仲間、 ホウライタケ科 ホウライタケ属:ヒメオチバタケ? シジミタケ科 シジミタケ属:クロゲシジミタケ ガマノホタケ科 ヒメカバイロタケ属:ヒメカバイロタケ テングタケ科 テングタケ属:ガンタケ ウラベニガサ属:ウラベニガサ、 ベニヒダタケ、 ホコリタケ属:ホコリタケ ナヨタケ科 キララタケ属:イヌセンボンタケ、 コキララタケ、 ナヨタケ属:ハイイロイタチタケ、 ムササビタケ、 オキナタケ科 オキナタケ属:シワナシキオキナタケ モエギタケ科 フミヅキタケ属:フミヅキタケ アセタケ科 アセタケ属:オオキヌハダトマヤタケ、 チャヒラタケ属:クリゲノチャヒラタケ カンゾウタケ科 ヌルデタケ属:ヌルデタケ
チャツムタケ属:コツブチャツムタケ、
ベニタケ科 ドクベニダマシ ヒビワレシロハツ、 ニオイコベニタケ チギレハツタケ、 マツカサタケ科 ミミナミハタケ属:イタチナミハタケ、 ウロコタケ科 キウロコタケ属:キウロコタケ、 チャウロコタケ、 カミウロコタケ属:カミウロコタケ
(以上ベニタケ目―9種)
(キカイガラタケ目)
キカイガラタケ科 (以上キカイガラタケ目―1種)
マクカワタケ科 カミカワタケ属:カミカワタケ?、 シワタケ科 ヤケイロタケ属:ヤケイロタケ、 エビウラタケ、 ツガサルノコシカケ科 オオオシロイタケ属:アオゾメタケ、 ホウロクタケ属:ホウロクタケ、 アイカワタケ属:アイカワタケ ツガサルノコシカケ属:ツガサルノコシカケ タマチョレイタケ科 タマチョレイタケ属:アミスギタケ、 アナタケ、 ウチワタケ属:ウチワタケ、 ツヤウチワタケ、 ツヤウチワタケモドキ ヒトクチタケ属:ヒトクチタケ シュタケ属:ヒイロタケ シロアミタケ属:アラゲカワラタケ、 クジラタケ、カワラタケ、オオチリメンタケ、 カイガラタケ属:カイガラタケ、 チャミダレアミタケ属:エゴノキタケ、 チャカイガラタケ、 ホウネンタケ属:ホウネンタケ、 マンネンタケ属:マンネンタケ、 オオミノコフキタケ、 サビハチノスタケ属:サビハチノスタケ
(タマチョレイタケ目―所属科未確定種) ミダレアミタケ属:ニクウスバタケ、ミダレアミタケ、 Trametopsis:ミノタケ近縁種 ニカワオシロイタケ属:シックイタケ (タバコウロコタケ目) タバコウロコタケ科 タバコウロコタケ属:キヌハダタケモドキ? キコブタケ属:ネンドタケ、ネンドタケモドキ アナタケ科 Hyphodontia:アナタケ オツネンタケ属:ニッケイタケ、 シハイタケ属:シハイタケ、ハカワラタケ、 シロサルノコシカケ属:シックイタケ (キクラゲ目)
キクラゲ科
ヒメキクラゲ、
シロキクラゲ科 (アカキクラゲ目)
アカキクラゲ科 ツノマタタケ属:ツノマタタケ、 子嚢菌門 (クロサイワイタケ目)
クロサイワイタケ科 (以上子嚢菌―2種)
川越周辺観察会―観察種の映像
トキイロヒラタケ |